COVID-19 年齢別感染者数の推移

7月になり新規感染者数が増えている。再自粛するかどうか現時点ではなんとも言えないが,「しなくても良い」論理の一つに「入院できる人数にキャパがあり,重症者も減っている」がある。各種の「新型肺炎データまとめサイト」をみると確かにそうなっている。
 最近,厚生労働省がまとめているデータがダウンロードできるようになったので,そのデータでプロットしてみた。残念ながら,重症者のデータはダウンロード対象ではないので,毎日の報告データから拾いだした。https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

■入院必要者,重症者,死亡者
 定義は厚生労働省のページを参照。日々の感染者(PCR検査陽性者)と入院必要者はほぼ比例関係にあるのでプロットしない。重症者は新規重症者ではなく,累積重症者で示した。

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 ここでは便宜上,前回の波を第一波,拡大しつつある現在を第二波と呼ぶ。4月の中旬と5月の初めに死者数のピークがあるれど,これは統計調整のためでここでは注目しない。
 入院必要者のピークは4/10頃。5/6頃から1ヶ月ほど0の日があるが,これはデータが「累積値の差分でその日の新規数」を割り出しているため。「入院が必要な人より退院する人が多い」と,その日の累積者数は前日より減るため,数値がマイナスになる。例えば,5/6は入院必要者数は前日より204名減っているが,それは退院者が331名いたためで,差分の127名が「本当の入院必要者」となる。調整しグラフにすべきだが,今日は生データをそのままグラフにする。
 死者のピークは二つの調整ピークを除くと5/2頃で,これは重症者のピークと重なる。その理由は言うまでもない。つまり第一波では入院必要者のピークと死亡者・重症者のピークは20-30日遅れていた。増加曲線もおおむねその程度の遅れだった。

 第二波は現在拡大中だが,第一波終盤に重症者・死亡者が減った「恩恵」をあけ,現時点では切迫指定なさそうに見える(医療関係者のご尽力に頭が下がる。感謝の言葉しかない)。 この状況はどれぐらい保てそうか? 推し量る材料として,年齢別・日別の感染者数推移をプロットしてみる。

■年齢別・日別の感染者数推移
 現在まで報告されたすべての感染者について,年齢・性別・居住地・感染確定日などのデータを下記サイトでCSVデータで入手できる。これをもとにグラフ化してみた。色分けはExcelのデフォルトを使ったので見にくいけど,ご容赦。東京ではなく全国の話。
https://gis.jag-japan.com/covid19jp/

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横軸は「感染確定日」なので,感染日や発症日が大事な疫学的な意味は低い。また,PCR検査数がどうのこのという議論はここでは目をつぶり,報告データとのみ向き合う。
 パット見て,第一波では20-50代の就労世代のピークが位置も高さもほぼ一致しているように見える。そこで他の年代を消してみる。

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 第一波では20-50代のカーブはまったく同じ。これは第一波におけるこの世代の感染拡大は就労,つまり通勤・職場・アフター5などにあったといえそう(就労人口が違うので疑問もあるが,それは別に考える)。
 第二波ではカーブがバラけ,報道されているように20-30代の拡大が第一波を凌ぐ勢いで推移している。一方,40-50代が踏みとどまっている。少しずつ増えているのは,市中感染の広がりを予測させる。
 では,高齢者はどうか。以降は20-40代の「代表」として30代のカーブをもちいる。

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 第一波について,60代・70代は就労世代20-50代のピークより少し遅れてピークがある(就労世代の第二ピーク)。粗っぽく言うと,20-50代の感染に,高齢者でも行動力がある60-70代が少し遅れて同期感染したように見える。
 更に高齢の80-90代も第一波にピークがあるが,他の年代と比べ凸凹が大きい。

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この年代では市中感染や家庭内感染より,病院や介護施設での集団感染,クラスターが主だと思われる。第二波では,対策が進み重症化しやすく致死率が高く年齢層に感染が広がっていないことが,現時点で重症者・死亡者が少ない要因といえそうだ。

 病院や施設の対策が進んだとはいえ,セキュリティ・ホールがあればウイルスは侵入する。人間の事情など忖度してくれない。
 今すぐ緊急事態宣言を行う必要はないだろうけど,「ウイルスが弱る」と言われる夏でも,これほど拡大している。このまま拡大させ,ウイルスが元気になる秋や冬を迎えて良い理由はない。爆発させてしまうとロックダウン以外の手がないのは,海外が証明していること。
 今は「強制的自粛」がいやなら,自衛の徹底しかない。

(追記)
10代以下はどうか。ピークの高さだけをいうと,すでに第一波のピークに近い高さにあり,40-90代と比べて拡大ペースが早そうなのが気になる。学校が開いていることと,関係あるのだろうか?

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以上

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