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育休中に、おもい、はせて、こめて。

2022年は1日も出勤していない。

ああーオミクロンだかなんだかで、在宅なのねーと思った方、不正解。今年の初めに我が子が爆誕したため、休んでいる。

毎日死ぬほど下手なドラマーが胃腸バンドのリズム隊を務めているのか?と疑いたくなるほど不規則に排泄される糞尿、空腹という至極単純な2字熟語を伝えるためだけに流される涙、そしてそれを拭うために捧げた睡眠時間を餌に育ちに育った睡魔という悪魔と向き合う中で、これを育児”休暇”と呼ぶことに合点が行かず鬱屈としていたのだが、正式には育児休業と呼ぶことを給付金申請方法を知らせる書類が届いた時に知った。

かといって睡魔がどこかにいくわけではないのだけれど。

先日スーパーで買ってきたカボチャを調理していたら、途中からカボチャがうんこに見えてくるくらいには睡眠不足で正常な思考を失いつつあり、かわEを通り越してかわFという形容詞を作ることで連綿と受け継がれてきた「形容詞は”い”で終わる。」という日本語のルールすら曲げてしまっても構わないと思えるほどに、我が子は愛おしい。

親の私はクズでダメなクソ人間で恨まれることの方が感謝されるより断然多い。でも最低限この子は健康で明るく、たくさん友達を作って人生という運ゲーを謳歌して欲しいなぁ、などと考えながら、毎日ちょっとずつ、でもしっかりと、そしてむちむちという効果音が聞こえてくるような速度で成長していく様を見せつけられて、そしてそれを間近で見ることができて、育休制度を使用して本当によかったと思う。

こんなことを書くと、いい会社だねー!とか、三ヶ月も育休取れるとかすごいね!とかいう反応をされるかも知れない(これを読んでいる人がいればの話)。実際、何人かの友人知人にはそんなふうなことを言われた。

「そんなに取って仕事どうすんだ?」といういかにもな感情がミルフィーユ状に「おめでとう」に挟み込まれたコメントを頂くこともあり、その都度それらのコメントに対して、「ええやろ、俺ってイクメン、ぐふふ」などと宣うつもりも、「うっさいわボケ」などと炎上覚悟の打球を打ち返すつもりもないのだけれど、ちょっとずつ部屋の隅に埃が溜まるように、育休を取得することに対する不安が溜まっていったように思う。

正直なところ、自分自身も妻に言われて上司に相談するまで、今働いている純ジャパドメドメな組織で一週間やそこらでなく数ヶ月の育休を取得するのは厳しいかもなと思っていた。制度の問題でなく、自分の仕事のことや、休んでいる間は入らない給料のこと、職場での人間関係のこと等今考えればこの手に抱いている我が子と過ごす時間と比べればあまりに瑣末(お給料以外)な、周りはどう思うのだろうという事ばかりを考えていた。

そしてその時になって初めて思い至る。育休を取得する男性に対して「おめでとう」という言葉の裏に、「仕事はどうするんだろう。」とか、「自分は無理だ」という感情を自らも忍ばせていたのだと。そしてかつての自分は今、実態の無い同調圧力へと形を変えて、鏡のようにこちらを見ていた。

それでも、相談した上司は快く「子ども最優先で!」と送り出してくれた。ほんとうにほんとうに、そういう人が近くにいてよかったと思う。

世界では!欧米では!とか意識の高い言葉を並べるつもりは毛頭無い。ほんとに仕事の都合がつかない人もたくさんいると思う。

自分はただの歯車で、いくらでも替えの聞く消耗品だからこそ、取れているとも考えている。そして世の中で働く大部分はそう言った歯車で占められているとも。それが無いと社会は回らないんだぞという矜持もどこかで持ちつつ。

それでも社会構造が変化している今、絶対に取得とまではいかないまでも、男が育休を取ることが驚かれないような優しい空気がこれから社会に充満していけばいいなぁと思った。

育休取ったからって自分が家庭内で役に立ってるかどうかはまた別の話。


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