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月刊 今月読んだ本 1月号
遠野於菟が今月読んで面白かった本を紹介していきます。
シャーロック・ホームズの凱旋
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森見登美彦待望の新刊。ジョン・ワトソン医師による私立探偵ホームズの活動記録という体裁はそのまま、舞台をロンドンではなく京都に置き換えるという大胆な脚色のもと描かれる森見流ホームズ譚。
まずは何を措いても「待ってました!」と言わねばならない。前作『四畳半タイムマシン・ブルース』から数えて約3年半ぶりの単行本だ。森見先生の書いた文章が新しく単行本1冊分読めるというだけで、ファンとしてはお腹いっぱいである。
「ヴィクトリア朝京都」なるキーワードがキャッチー過ぎて出落ちを疑いそうなほどだが、読んでみると驚くほど違和感がない。「深刻なスランプに陥って寺町通221Bに倦むホームズ」という設定もいわゆる「阿呆大学生もの」の系譜である。探偵小説の金字塔をお馴染みの作風へと汲み込む華麗な筆さばきを是非とも堪能してほしい。
勿論、初期からの作風の踏襲ばかりではない。ここ最近の作品で比重の大きくなってきたメタフィクション的な仕掛けは今作でも効果的に取り入れられている。『夜行』の頃はぎこちなさも否めなかったが、壮大な枠物語を展開した『熱帯』を経て、今作ではすっかり我が物として使いこなしている印象だ。作家生活20周年を過ぎて、森見登美彦は進化し続けている。いち読者としてこれほど喜ばしいことはない。
なお、こんな題名だが本編中にミステリ要素はあまりない。ミステリ愛好家諸賢はご留意を。
ルポ路上生活
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