見出し画像

ニュージーランドでマオリ族が大規模抗議行動をしました

こんにちは、ニュージーランドに住んでいるとのっちょです。

今回の記事は元ネタがないことは書いていないつもりですが、主観的な物言いや元ネタの解釈違いで間違えたことを書いているかもしれませんのでご注意ください。

2023年12月5日、ニュージーランドの原住民でもあるマオリ族とその支持者たちが大規模な抗議行動をしました。

マオリ族というと顔に入れ墨をしてハカを踊る人たち、というイメージが強いと思いますが、ニュージーランドでは白人が入植するより以前から住んでいる人々です。

今回の騒動は、現在の与党がワイタンギ条約に手を付けようとしたことで起きているようです。この辺ニュージーランドの歴史がわからないと理解しにくいかもしれませんので少し自分なりに説明しようと思います。

と言ってもこの記事を見ると大体わかります。


NZの歴史をダイジェストで

ものすごい大雑把にこの辺の歴史を書いていくことにします。

  • 1642年にヨーロッパの探検家タスマンがニュージーランドのゴールデンベイに到着、マオリと遭遇するも船員4名殺害されて避難

  • 127年後の1769年にジェームズ・クックがニュージーランドのポバティ・ベイに到着

  • そこから60年かけて交流を強化

  • 1810年、1820年のマスケット戦争でマオリの人口20%が犠牲に

  • 1830年代にNZ在住の宣教師が英国に植民地化を請願、1830年代終盤にニュージーランドが英国の植民地になる

  • 1840年代ワイタンギ条約締結したものの英語版とマオリ語版のワイタンギ条約に齟齬があって未だに解決していない

  • 1845年ニュージーランド戦争勃発、1872年のTe Kooti's Warまで続く

  • 1886年、現地で誕生した非マオリ族の人々がニュージーランダーを自称するようになる

  • 1975年にワイタンギ条約の齟齬によって発生するトラブルに対応するために、ワイタンギ裁判所が設立される

大体流れとしてはこんな感じであり、マオリ族にとってワイタンギ条約が英国が作った条約でしかも意味が違うバージョンを渡された上にすべての族長が署名したわけじゃないものでありかつ締結から100年以上この辺の問題を法的に対応するように政府が動いてくれなかったものと言っていいと思います。

だったらこんなワイタンギ条約いらないんじゃないのか、政府が手を付けてくれるなら万々歳じゃないのかと思うかもしれないんですが、そうでもないようで、今回の政府の方針はマオリに対する攻撃だとまで言われています。

ワイタンギ条約って何を決めたの?

ここに日本語でまとまっていますが、基本的には白人による不当な土地の売買を抑えるための法が必要である、という観点でワイタンギ条約を締結したということですが以下のポイント・問題点があります(ここが多分重要)

  • 英語版では主権を英国君主に譲ると書いているがマオリ語版では主権を共有するとなっている

  • マオリが土地、森林、水産資源の財産(タオンガ)を管理して良いとなっているがタオンガには本当は言語や文化も含まれている

  • マオリが伝統的な権利を持ちつつ英国民同等の権利も保証されている

確かに以前、知り合いが家を買うときに「この地区のマオリの族長に許可を取らねばならない」と言われていました。

これがあまりにも大雑把で申し訳ないんですが、ワイタンギ条約の中身です。

マオリ族からすると、これまで通りのニュージーランドに共同統治者として白人が住み着くことに同意したはずが、主権は持っていかれそうになるわ自分たちのこの国での権益が制限されるわになっていたと言ってもいいかもしれません。

今回政府は何をしようとしているの?

ワイタンギ条約には主権問題とマオリの既得権益問題が含まれています。じゃぁ今回政府は何をしようとしたのでしょうか?

共同統治の話をしているようです。

The Treaty Principles Act would be short but decisive. It would say:

It would define the Principles of the Treaty as.All citizens of New Zealand have the same political rights and duties
- All political authority comes from the people by democratic means including - universal suffrage, regular and free elections with a secret ballot
- New Zealand is a multi-ethnic liberal democracy where discrimination based on ethnicity is illegal

ACT proposes referendum on co-governance

ワイタンギ条約によってニュージーランドに横たわっている様々な不公平を改善しようという話であり、それは同時に原住民であるマオリ族の様々な権益を脅かすものでもあります。

そもそもこの法案は成立しうるのでしょうか?

今回の連立政権の条件として、ナショナルのラクソン、ニュージーランド・ファーストのウィンストンがこの法案提出に対してのサポートを約束しました。

つまり、議会に持ち込むことまでは確定しており、その後実際に成立をするかは別の話のようです。この国の国会の仕組みもよくわかっていないのでこの辺雑ですいません。

ウィンストン・ピータースはもうみんなの知性に期待するしか無いと言っており、彼すらビビるあたりにこの法案のヤバさや国としてやりたくない感が垣間見えてきます。

マオリ視点で見るとこれはどういう意味なのか?

一言で言うならばとうとうマオリの国ではなくなってしまうということなのではないでしょうか?

ワイタンギ条約がワイタンギ条約のままであれば誰の国かは有耶無耶なままにできたのが、今回のこの法案が成立したらニュージーランドは多様な民族が一緒に住む国となり、マオリの国ではなくなることが確定します。

更に言うならば先程書いたタオンガもみんなのものになってしまう、ということは当然懸念されると思います。

レイバーの政治家もこれを強行するならマオリは戦争を始めるだろう、と警告をするくらいにかなりリスキーな改革をしようとしています。

この法案には要注目

というのも、デビッド・シーモアがこの法案をやりたいというだけでここまでの大規模な抗議行動が起きるわけですから、転び方によっては治安などが悪化する可能性があります。

ニュージーランドにすでにいる人、これから来る人も注意したほうがいいかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?