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私達はなぜコオロギビールを造ったのか

※2023/2/24追記
2023年2月現在、弊社ではコオロギビールを製造しておりません。また本ビールの製造にあたり、補助金は用いられておりません。インターネット上での悪質なコメント、事実無根の書き込みや誹謗中傷については法的措置を検討してまいります。

明日からコオロギビールの提供がスタートします。お陰様で2月20日のプレスリリース以来、賛否両論さまざまな反応をいただいています。あらかじめ想定はしていましたが、私達の想像を超える反応の多さにとても驚いています。

「飲んでみたい!興味ある!」というポジティブな反応も多い一方、「絶対無理!どうせ話題作りでしょ・・」といったネガティブな反応も同じくらいあります。話題性ばかりが先行しているコオロギビールですが、正式なリリースを前に改めてその舞台裏をお伝えしたいと思います。

※これより先は、コオロギの画像が多数ございます。虫類が苦手な方は、閲覧にご注意下さい。

1.コオロギビール誕生のきっかけ

「実はやってみたいアイディアがあって・・・。コオロギを使ったスタウトが造ってみたいんですよね・・!」

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2019年6月。若手醸造家による「発酵ニュージェネレーション角打ち」というイベントへ参加したことが、コオロギビール誕生のきっかけでした。そのイベントに一緒に登壇していたのが、今回のコラボ相手であるANTCICADAの山口歩夢さん。コオロギ醤油などの開発を手掛ける、才能豊かな若き発酵家です。

実は5年ほど前からビール×昆虫食の可能性について考えており、それが冒頭の宣言へと繋がっていきました。環境負荷が低く、循環型で、効率的にタンパク質を確保できる昆虫食は、様々な社会問題を解決しうる可能性があると感じていました。詳しくは下記のリンクを御覧ください。

一方で昆虫食については、偏見やネガティブなイメージがあることもまた事実。そこでビールという飲み物に形を変えることで、「何か面白い化学変化が起きるのではないか?」と漠然と考えていました。
もちろん、純粋に素材としての美味しさも魅力的でした。中でもコオロギの香ばしく複雑な味わいは、濃色系のビールの風味にマッチするはず!と直感的に感じていました。思い切って山口さんにアイディアをぶつけてみたところ、「やりましょう!」という前向きな反応が。このイベントをきっかけに、コオロギビールが実現に向けてスタートします。

2.葛藤と決断

どんな味のビールができあがるんだろう?というワクワク感や楽しさはあったものの、商品開発を進めていく過程で様々な問題にぶつかりました。

コオロギの分量は?投入タイミングは?
味は美味しくできるのか?廃棄するリスクもあるのでは?
250Lを売り切れるのか?価格設定はどうする?
変に注目されるのでは?会社のブランディングとして大丈夫?

中でも一番の課題は、やはり世間一般の"昆虫食への抵抗感"でした。FAO(国連食糧農業機関)の報告書がきっかけとなり、世界的に昆虫食への注目が高まってはいるものの、日本では未だにその風当たりは強い。私自身様々な人にヒアリングしましたが、「コオロギが入ったビールなんて絶対無理!!気持ち悪い!!」と言った意見が少なからずありました。社内でもリスクが高すぎるので「辞めたほうがいいのでは?」という意見があったことも事実です。「やっぱり無理なんじゃないか・・・」と半ば諦めかけたこともありました。しかし最終的にやり切ろう!と決めたのは、ANTCICADAのビジョンに共感し、彼らのチャレンジを純粋に応援したいと思ったから。以下、彼らのクラウドファンディングページから抜粋します。(詳しくはリンク先のページを御覧ください。)

2019年4月、志に共感して集まった、関根賢人、山口歩夢、大高尚人と意気投合し「地球を愛し、探究し続けるチーム」ANTCICADA(アントシカダ)が発足しました。
動物も、植物も、虫も、分けへだてなく向き合える世の中を目指し、世界に発信していきます。
「昆虫食への固定概念を払拭し、その魅力を伝える。」ことも大きなテーマの1つ。
昆虫というと、ゲテモノや害虫など、ネガティブなイメージが先行しがちですが、食材としての魅力と真正面から向き合い、ポジティブな昆虫食のあり方を提案していきます。
〜中略〜
僕は、この地球を愛しています。
そこにかける情熱は誰にも負けないですし、コオロギラーメンや、コース料理を通じて、今までにない昆虫の魅力、ひいては地球の生き物たちの可能性をお見せできると確信しています。豊かな地球を味わうワクワクを、皆さまと一緒に分かち合えたらこれ以上ない喜びです。

彼らの昆虫に対しての真っ直ぐな愛や溢れる情熱に触れる中で、なんとかして形にしたい!と強く感じるようになりました。

3.コオロギビールの醸造

ANTCICADAのメンバーと何度も何度もやりとりを重ね、レシピを固め、様々な問題をクリアし、ついにビールを醸造する日がやってきました。原料のコオロギは「太陽グリーンエナジー株式会社」の食用フタホシコオロギを使用。

福島県にあるファームにて、室温・湿度管理を徹底した最適な環境下で、社食のロスで出る野菜などを餌に育てられたものです。独特の臭みが一切なく、甲殻類のような濃厚な旨味と香ばしい風味が全面に感じられます。(普通に美味しかった!!)その特徴を最大限活かすべく、コオロギを軽くローストして香りを一層引き立たせ、半分は粉砕し、半分はホールのまま麦汁とともに煮沸します。麦芽とコオロギの風味のバランスを意識しながら、ビールとしての美味しさを追求しました。

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大きなトラブルはなく、無事に仕込みは終了。カラーは狙い通り深いダークブラウン。出来上がった麦汁は、黒糖のような風味の中にしっかりとコオロギの風味が感じられる不思議な味わいでした。

4.世界初!?コオロギビールが完成!

約1ヶ月の発酵、熟成を経て、コオロギビール / Cricket Dark Aleが完成。2020年3月15日-18日の4日間、渋谷パルコのPOPUPイベントにて限定リリースされます。

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また弊社TAPROOMでも同時開栓致します。味わいについてはここでは説明しません。先入観なしにストレートにビールを味わって、感じてみて下さい。ぜひ率直な感想を聞かせていただけたら幸いです。
※昆虫は甲殻類と同じ成分を持ちます。甲殻類アレルギーの方はご遠慮ください。

5.コオロギビールを造る意義

おそらくビールの味わいについては、賛否両論あると思っています。(昆虫食についての賛否も含め)ネガティブな反応が多いことも予想される中で、コオロギビールを造る意義とは一体何なのか。

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私達は決して話題作りのためにコオロギビールを造っているわけではありません。世界的な食糧不足が叫ばれる中、今後間違いなくその重要度が高まってくるであろう昆虫食。しかし、現実にはネガティブな印象を持たれることも少なくありません。そんな色眼鏡で見られがちな昆虫食に対して、自由な発想と多様性を歓迎するブルワー精神を持って光を当ててあげること。さらには原料としての昆虫のポテンシャルを最大限引き出し、美味しい飲み物として昇華させること。それこそが私達がコオロギビールを造る意義だと思っています。

ビールという飲み物を介して昆虫を表現することで、昆虫食の一番のハードルである"見た目の抵抗感"をクリアすることができます。またビールは他のお酒と比べアルコール度数も低くラフに楽しめる飲み物のため、昆虫食の間口を広げ、多くの人にその魅力を伝えられる可能性があります。昆虫食に対してネガティブなイメージを持っている方々が、コオロギビールをきっかけに興味を持ち、自らの世界を広げるきっかけとなってくれたら幸いです。

5.おわりに

今回辛抱強く一緒にコオロギビールを開発してくれたANTCICADAの篠原祐太さんとメンバーの皆さん、最高品質のコオロギを提供してくれた太陽グリーンエナジー株式会社の皆さん、コオロギビールを造るきっかけをくれた旅する醸造家の立川哲之くん&d47 MUSEUMの皆さん、本当にありがとうございました!!まだまだ改良したい点がたくさんあるので、一緒に育てていきましょう!!

ビールは自由だ!
好奇心を忘れずに!
フラットな感性で!
多様性を歓迎しよう!

BEER TOGETHER!

◎この記事を書いた人◎
袴田大輔 / Hakamada Daisuke
株式会社遠野醸造 代表取締役
"クラフトビールをもっと身近に、もっと楽しく"
ホップの産地遠野で、新たなビール文化を醸成すべく奮闘中。0歳児の子育ても奮闘中。遠野醸造では、ブルーパブ運営、人事、総務、会計、広報など幅広く担当。何でも屋です。
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