2021年F1最終戦を見ての感想
見終わった直後に書いているのですが、いやあ…言葉が出ない。歴史に残るレースになりました。
私のレース前の予想は、フェルスタッペンがチャンピオンをとるだろうというもの。オカルトと言われそうですが、私たちが生きる社会には筋書きなんてないはずなのに、天才的なシナリオライターがいるかのように物事が進んでいく時があって。後から振り返ると、歴史の必然としか言いようがないタイミングで出来事が起きることがあります。
念のため言うと、決して、運命論とか未来は決まっているみたいな考えではないのですが、社会の様々な分野の歴史を振り返ると、そう思わずにはいられないところがあると私は感じています。
さてF1の話に戻って。車の速さも相まって、絶対一強時代を築き上げたハミルトン。卓越したドライバーなのはもう誰もが認めるところ。そして”あの”シューマッハを超える8回目の世界チャンピオンがかかったこのシーズン。
しかし、長く続くそのメルセデスーハミルトンの治世に、厭世観が漂っていたのも確かで。最近はハミルトンが必要以上にヒール扱いされることが目立ちました。そんなとき、十分な助走期間を経て力を蓄えたフェルスタッペンが勝負できる車を手に入れた。
長らくF1の歴史の一部を担ってきた、そして恥辱の時間を乗り越えたホンダが今年で撤退することも、見ている側の心情を動かす。
そして今シーズン、御存知のとおりフェルスタッペンとハミルトンはがっぷり四つの互角の戦いを繰り広げました。
二人のドライバーともにミスがあったり、不運があったり、議論を呼ぶドライビングがあったり。どっちのチームもドライバーもnastyなとこがあって、決してどちらかが正義ということはないんですが、全体的には、みんなに受け入れられやすいハッピーエンドはフェルスタッペンのチャンピオンという空気がシーズンを通して出来上がっていた。
そして、関係者やファンが作り出すその雰囲気の中、あれだけの才能と車を持っているハミルトンがポイントで引き離せない。ああ、これは時代がフェルスタッペンに勝たせる気なんだなと思って見ていて。
最後の数戦、ハミルトンが巻き返してきたのも、歴史のシナリオライターがハミルトンの強さを強調してドラマを盛り上げるためだろうと。もし、ハミルトンに勝たせる気なら、どこかのレースでフェルスタッペンのエンジンが壊れるか、パンクするか、アクシデントで順位を下げるか。いずれにしてもハミルトンがポイントでアドバンテージを持った状態で最終戦を迎えるはずがそうはならなかった。
ということで、レース中はずっとフェルスタッペンが勝つだろうと思って見てました。
スタートで先行されたときも「まあ大丈夫じゃね」ぐらいで、バーチャルセーフティカーが入ってタイヤ交換したときには「最後はハミルトンのタイヤが垂れてフェルスタッペンが代わすのか」と思ってたぐらい。
「あれ、もしかしてハミルトン勝つのかな」と思ったのは残り8周くらいになってから。タイムギャップ、2人の間にいる周回遅れを考えると、いくらハミルトンのタイヤが垂れても、普通に走ったら流石に厳しい。レース終盤のこの場面でセーフティカーが出ることも考えにくい(ドライバーだって下手にここで出したくはない)。
この流れでハミルトン勝つのか、私の予感も外れたなと思ったら、御存知のとおりまさかのセーフティカー。歴史の流れってやつは本当に恐ろしいなと思いました。
そして、ハミルトンがステイアウトでフェルスタッペンがタイヤ交換した時点で決まりだろうと。前を走っていてタイヤで不利な状況の側が最悪の手段としての相打ち(覚悟のブロック)を選べない。
DAZNではレースが再開されるか話題になっていましたが、F1が興行である以上、絶対にレースは再開される確信はありました(復旧に時間がかかるなら一度赤旗を出して中断してでもレースは再開する)。
そして最終ラップ、フェルスタッペンがハミルトンを抜いた時、多くの人が思い出したのが2008年のブラジルでないかと。ハミルトンの初のワールドチャンピオン。雨の中、最終ラップでの奇跡の大逆転。
今回と同じように天が勝たせたとしか言いようのない展開で栄冠を手にしたハミルトンが、長い月日を経て今回は逆の立場に立たされる。歴史の輪廻というやつはほんとに恐ろしい。
さて最後に書いておきたいことがあって。
繰り返しになりますが、どちらのチームもドライバーもファンがいるし、ちょっとアンフェアなところもあって。決してどちらかが善玉でどちらかが悪役ということはないのですが、こういう最終結果になったことを踏まえてシーズンを振り返ったときに、ひとつ指摘しておきたいのはセカンドドライバーの扱い。
メルセデスのボッタスへの理不尽な扱いには「そりゃ確かにハミルトンより遅いだろうけどさあ…」と多くのファンが感じていたと思います。ペレスもフェルスタッペンには速さで及ばないことが多く、サポートに回らされる場面もありましたが、見ていてそこに理不尽さを感じることはなかった。
私はこれは今シーズンの大きなファクターだったと思います。
トトは確かにやり手で優れたリーダーですが、チームとしての一体感は明らかにレッドブルが上だった。
前レース、不運な事故でリタイアしたペレス。今週は、ハミルトンへの必死の抵抗は言わずもがな、ペレスのサポート面での獅子奮迅の活躍が目立ちました。
レース結果に直接の影響を与えることはなかったかもしれませんが、シーズンを通してみれば、戦略を決定する判断においてこの要素は無視できない影響があった。それが今シーズンのポイント推移を左右したと思いますし、ファンなど周囲のムード作りへの影響も含め、この最終結果につながったと考えています。
強烈なレースだっただけに余韻もなかなか醒めませんが、間違いないのはF1の歴史が今日動いたということ。
そして歴史の歯車は元には戻らない。私が言う「時代の流れ」というのがあるのなら、来年以降、ハミルトンの8回目のワールドチャンピオンは相当難しくなったはずです。
さて、この予想は当たるのか外れるのか。
また新しいシーズンを楽しみに待ちましょうか。