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母との電話

父があわくって牛舎横の畑を耕し始めた。

昨日、閑古鳥が鳴き始めたからだ。

昔から閑古鳥の鳴き始めがとうきびの種植え期の合図だと言われている。

それは地元での言い伝えなのか

先祖だいだい伝わってきたのか

日本全国で言い伝えられているのかは

聞いていないからわからない。


わたしがちいさい頃、

父は仕事人間には到底見えなかった。

それは酪農家ゆえ

子どもの未来を縛り付けないよう

作られていた人物像なのかもしれない。

継がなくてはいけないと思わぬように

酪農をしている姿を

遠く離していたのかもしれない。

働く親父の背中を追わせないように。

結果、わたしも弟も地元を離れて

それぞれ違う職種の仕事についている。


父のように自然を相手にして働いている

そのノウハウを

ちいさい頃からたくさん聞いていたら

鳥の鳴き声、虫の音、川のせせらぎ、

うっとおしく思っていた雨粒さえも、

友達のように身近に感じて

もしかしたら、

今とは違う生き方や考え方を

していたのかもしれない。

と、大人特有のたられば話。

大人になって、

また都会に住んでいるからなのか

閑古鳥が鳴き始めたら種植え期

の自然と共存している感じが

たまらなく輝いて聞こえた。

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