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新月

あんなにも
カチカチだった心を
溶かしてくれたのは
月であり
朝陽であり
秋の柔らかな風であり
もろくも優しい
ひとたちだった
黒く深い海に
飲み込まれないように
息をするのが精一杯だった夜
希望を求めて
見上げた新月
目覚めると
生まれ変わったように
橙色に凪いだ海が
ゆっくりと身体に満ちる
おおきく
途方もない
あつみをもって
目を閉じ
息を吸って
固く結んだ
唇をほどき
全てを受け入れよう
大丈夫
呑み込まれやしないから



(と)



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