桃ころころシステム

どんなお仕事なんですかと言われると大体
「まあそうですね〜、今の季節ですと桃をころころしていることが多いですね」
「桃を？」
去年の夏も、今年の夏も、私は桃をころころしている。

もうどこかに書いた気がするのだが、桃というのは非常にデリケートなので小売店に入荷されるまでのあいだにどうしても一定数は傷んでいる。それを売り場に出すわけにはいかないので検品をする。上から見てきれいでも、けつの部分が悪くなっていることが多いので、パンツを脱がせておしりを確認するのである。そのとき桃を手のひらのうえでそっところころするので、この作業を桃ころころと呼んでいる。

私は桃をころころしすぎて、桃ころころシステムと化した。さようなら、人間だったころの私。これからは、桃ころころシステムとして生きていきます。

これから悲しいのはぼくだから、
なんでも手に入れてきたあなたが
人の悲しみを決めつけないでください。

怒りのエネルギーは思春期のころとはちがって、なんの役にもたたずにただお互いの体調をすこしずつ悪くしながら発散していった。
桃を優しくあつかう手。