よくいわれる

よくいわれる。
と、よくいわれる。

「ずるいですね」
「よくいわれる」

人に執着するとき、許せなさみたいなものがある。許せない、このままこいつを野放しにしておけない、ずるすぎる、そういう気持ちが根底にあることに今更気がつき、いままでのことすべて合点がいった。

だからなるべく言葉から変えていこう。呪いだけは唱えない。わたし、呪いません。はねが生えてきたらいいのにとおもう。光の輪が浮かんだらいいのにとおもう。いい魔法だけ使えたらいいのに。

月が満ちた。もっと軽やかになりたい。重力加速度とハレーション。地面につくよりはやく風にのる。絶空決めたい。

そんなものなにになるのといわれてきたものだけで宙に浮かびたい、受け取り手の感受性任せの無価値な私を肯定してやりたい、満足したい。

偽物をぜんぶ暴きたい、いらない、本物にずっと触れていたい、笑いたい、傲慢だがそのくらいの傲慢なら許されるようになりたい、だれにも見えない努力をしたい、苦しくてもひとりで抱えられるくらい強くなりたい。

あなたのためにと思いたい、あなたのためだと思いながらそんなこと言わずにいたい。

気色悪。