ジンの味

友人が「ジンを飲んでいる」というからジンってどんな味とたずねた。ジンはジンの味といわれた。

最近話題の日本のジン「翠」のジンソーダが缶で出た。コンビニで見つけたので、ジンの味を知るために買った。

ごくり、ふむふむ。おいしいかもしれない。しかしどんな味なのかはちっともわからないぞ。
なるほどこれがジンの味か。
と悟るに至らず。
いろんな味がした。
しかもそれぞれ既に知っているような、
あなたまえに口に入ってきましたよね
という感じがする。
それでいて、あれみたいと
なにかに喩えることもできない。
兄の車の中ではじめて
ミルミルを飲んだとき
「飲んだことのない味がする。
ジョアみたいな味がする」
と言った私に兄が
「飲んだことあるじゃねえか」
と言ったのを思い出す。
ジンはほんとうに飲んだことがない。
ジョアに似てるとかはない。
なにとも言えない。
懐かしいけれど他に似たもののない
異質なものの複合体である。
ジンソーダの、
どこまでがジンで
どこからがソーダなのか、
それがわからないことには
ジンの味がわかったとは
いえないだろう。
ぼくはなにもわからなかった。

それからすべてにいらいらした。
ふざけるなよ。
わかりたいよ。すべてを。
まあどうせ死ぬからいいか。 
でもとても寂しいね。
ジンは寂しい味です。

顔にはアンテベートを塗ってはいけない。
でもどこからが顔なのか。
それもわからない。
顎は首?
それとも顔?
耳は顔に含まれる?
額は顔? まあ顔でしょうね。
ぼくのうちのどこからが顔で
どこからが体なのか
それがわからないことには
僕のことをわかったとはいえない。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻