言葉遊び「母音調和ごっこ」

今日は言葉で遊んでみようと思います。言葉遊びというとダジャレや回文などがありますね。今回遊んでいくのは「母音調和ごっこ」です。

このゲームをしているうちに母音調和とはなにかだんだんとわかるようになりますので、母音調和がなんなのかわからなくても大丈夫です。

(日本語の祖となる言語に母音調和があったかどうか、日本語が母音調和のあった他言語と言語的接触があったかどうかは、まあ普通に考えてあったんでしょうけど、まだ明らかになっていないようです)

それでは、始めてみましょう。

まず日本語の母音を半々に分けます。
あ お う をAグループ
え い    をBグループとしましょう。
ただこれだと3対2でなにか落ち着かないので、Bグループにもうひとつ母音を足したいと思います。英語のaの音でも足しましょうかね。
あ お う
a  え い
これでいいでしょう。

英語のaは適当に選んだのではなく、「い」や「え」と音声的に似た性質を持っているから選びました。
舌の形が近いのです。
「あおう」は後舌グループ、「aえい」は平舌グループです。
「あおう」というときには、舌の根本のほうが盛り上がっていますね。対して「えい」というときは、舌の前のほうが比較的盛り上がっていますね、平らというか。英語のaはその舌の形で「あ」と言えばその音になります(アメリカ発音)。

それでは元になる文章を作りましょう。

むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが暮らしておりました。ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にでかけました。おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。おばあさんは大変驚いて、ももをお家に持って帰りました。帰ってきたおじいさんと桃を食べようと包丁で半分に切ると、なんとなかから見事な男の子が出てきました。おじいさんとおばあさんはこの子を桃から生まれた桃太郎と名付けて、大切に育てました。

書き始めて気づきましたが、桃太郎という話は書いてみると結構長いです。ここでやめておきます。

さて、ここでやっと母音調和ゲームのルールに入ります。

①ひとつの単語の中では同一グループの母音しか使えないので、多い方の母音に調和する
例)むかしむかし→「し」はBグループなので使えません。Aグループの母音に置き換えます。

②元の母音が重複していないなら、なるべく重複しない母音を選ぶ
例)むかしむかし→う、あ、いなので、「うああ」や「うあう」などはだめ。よって「お」が選ばれる。
むかしむかし→むかそむかそ

③助詞は付属している単語の母音に調和する
例)ところに→場所を表す助詞「に」は、Bグループ母音の単語のあとでは「に」のまま用いるが、Aグループの単語のあとでは「な」とします。よって「ところな」

④形容詞や連用形の単語の最後の母音はあとに続く単語の母音グループに調和します
例)ある日→あれ日

⑤複合語は先行する語のグループに合わせたり、似た意味の言葉がちょうどよくあればもはや漢字もそっちを採用します
例)芝刈り→しび切り

⑥変則的な仮名遣いの助詞は母音調和をしたあともそれに倣います
例)山へ→山ふ(やまう)

⑦漢語についてはかつての日本人が母音を補ってしまった部分もあるので、そういうところはカットします
例)洗濯→せんてk

⑧カットしたままだと日本語らしい発音にならないので、その次の助詞と同じ母音をつけることとします
例)洗濯に→せんてきに
 洗濯を→せんてきゐ(せんてきいと発音します)

⑨「し」「じ」「ふ」など、行のなかでも調音点が異なる字母については、行の音価に従って活用します
例)おじいさん→ojiisanなのでojaasan(おじゃあさん)などとしたくなるが、日本語の音韻だと「じゃ」と書いている時点で感覚的には母音が変わっていない気がするはずだから、「おざあさん」とする

⑩漢語の二重母音が母音グループから逸脱する場合は長音で均す
例)大変→たーほん

というわけですべての母音をいじるとこうなります。ぜひ音読してみてください。

むかそむかそあるところな、おざあさんとおばあさんが暮らそつおろまそた。あれ日、おざあさんは山ふシビ切りに、おばあさんは川ふセンテキにできけめしta。おばあさんが川どセンテキゐしていれち、川カムから大かなももがどんぶらこ、どんぶらこと流るときめしta。おばあさんはターホン驚うと、ももをおうつな持っつかうらまそた。かうっつきたおざあさんとももを食ぶようと半分な切れち、なんとなかからまごとな男の子が出てきめしta。おざあさんとおばあさんはこの子を桃から生まろつ桃太郎とにづけて、ターソタな育とまそた。

いかがでしたか。発音してみるとなんだか口が面白いですね。また、人間生活に密接に関わる単語というのはもとから似た母音を用いていることがわかります。
山、川、どんぶらこ、男の子、桃太郎などは、母音いじりをすることなく、そのままでも母音が調和しているとも言えるのではないでしょうか。非常にロマンがありますね。

みなさんもぜひ母音調和ごっこで遊んでみてください。それではまた。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻