ももたる
桃太郎トマト。
私はずっと貧乏です。
魚。
魚の脂は肉のとは違って優秀だと聞く。
でも値が張るので食べない。
ここは島国なのになぜ魚が高いのか。
海をばしゃばしゃ泳いでいる。
牛や豚よりうんと増えそう。
餌も少なくてよさそう。
なのになぜ高いの。
もっと社会科の勉強をしておくのだった。
なすやきゅうり。
ほとんどが水なのですって。それで買うのをためらうようになった。
あなたたちのことは見限った。彼らが私達に提供してくれるのは味や食感、色、お盆といったもの。栄養はあんまりないみたい。
トマト。
栄養があるだの美容にいいだのと褒めそやされて赤く照れているこいつは僕の実入りにしてみれば贅沢品である。
金がないとなれば
食べねばならぬものだけを食べる。
嗚呼そう切り捨てられてきた
食の選択肢たちよ。
さて、多くのスーパーの入り口では野菜たちがお出迎えしています。これは購買心理の研究の結果なのだそうです。
たかが葉っぱやくだものの発する季節感に操られて、我々はその日の献立を考えるくせがある。
ある日、
もよりのお店の入り口に
積まれたトマト。
桃太郎と銘打たれている。
調べたらトマトはほとんど
桃太郎種らしいけども。
Sサイズが六個で300円。
ひとつぶ50円。
やはり比べたら高い。
でもなんてかわいいのだろう。
赤くて、丸くて、つやつやしていて。
桃太郎。
あのひとも、仕事で夜遅くなった日に、トマトとナッツ類を食べたってゆってた。あと歯科医の三木尚子が子どものおやつにトマト喰わせてるってゆってたし、皮膚科医の友利新もトマトはお肌にいいってゆってた。(なんかYouTubeがやたら見させてくる女医二人)
買った。
そしたらひさしい甘さの
なんとおいしいことか。
朝夕ひとつのトマトの嬉しさ。
レタスといっしょに。
セロリといっしょに。
あるときはりんごといっしょに。
食事の最初に食べると血糖値の上昇がゆるやかになり、死ににくくなるらしい。
考えてみれば、なすもきゅうりもかわいい。なにより味が好きだしあいつらの。手にとったときの重みと愛しさがあればそれでいいんじゃないかしら。
魚だって、無残にもばらばらにされた牛や豚とは違って、死につつも顔のある状態で尊厳を持ったまま陳列されていてかわいい。
ずっと裕福ではないから、あまりにもじぶんの心に染みてくるものを看過しすぎている。
いまは暗闇だから。
ありとあらゆるものが好き。
手触りで好き。
あのひとの話のなかに出てきた本。
手触りだけで読んだ気。
わかった気になる。
私には上等な名前を
母はよくつけたものである。
「ももたろ」みたいな音程の本名。
でも母は納得していない。
より高みを目指している。
中学生になってからも
「ももたる」にすればよかった
とか言っていた。
ももたるくん。
あなたが裕福だったなら
どんなものを残しただろう。
トマトだけが覚えている話。
いつかだれも忘れてしまうような話。
さみしいね。
五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻