やめ

宇多田ヒカル「PINK BLOOD」に
「傷つけられ
ても自分のせい
にしちゃう癖
カッコ悪いからヤメ」
という詞がある。
ヤメ
って……。

出会い系アプリをヤメ。
やめた。
出会い系アプリをやめると
どうなるかというのは
一度経験しているので
わかっていることである。
中学生のころに戻るのである。
なにが中学生のころなのかという
話であるが、
性の捉え方が
中学生に戻るのである。
中学生のときはどのように
性を捉えていたのかという
話であるが、
もう全世界のすべてが
愛の対象になるのである。
それは大嘘であるが、
愛の向け先の輪郭が
じわじわ滲んで広がる。
だれのものでもない気持ちの空き地、
心の余白ができ、
大変かろやかになる。
ほかのひとにも
優しくなる。

わたしたちのような人間というのは、
マッチングアプリとかいう言葉が
世間に跋扈するより二十年早く
その世界観のなかで
出会いを求めてきた。
そうしなければ
犯罪者予備軍のまま。
やはり大切な気持ちを経験しないまま
生きていくというのは
孤独であるから。
それをやめたら私の場合、
そういった意味での出会いなどは
ゼロになります。
そのぶん持て余したラブは
道端の犬とかに向けられます。
まあいいかと思う。
犬の足の付きかたとか、
背中の感じとか、
耳の立ちかたとか、
飼い主に名前を呼ばれたときの
眉のうごきとか、
眉ないけどね犬は。
そういったすべてのつくり
ひとつひとつをつくった
かみさまの器用さ、
それをかわいいとおもい
愛して共生してきた人間たちの心、
それとおなじものを持って生まれた
私。
なんとなく、
よかったなあとおもう。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻