電子回路交換会

たんすの一番上の段には大事なものがしまってあった。父はそこから、手のひらに乗るくらいの、四角く、平べったいプラスチックのケースのようなものが何枚か、輪ゴムでひとくくりにされたものを取りだし、母となにか話している。たわむれに、幼い私の手にもそれが一枚渡された。

材質と形はMDやゲームボーイのソフトみたいで、表は透明、裏は色のついた半透明のプラスチックが合わせられている。内側の隙間にはなにか機械の基板のようなものが閉じこめられていて、取りだそうとしても完全に密閉されていて開ける方法はない。中身は金属製できらきらと光っている。見るだけの飾りのようなものだろうか。

それらを鞄にしまった父に連れられ、駅のほうに歩いた。高架下のなにか薄暗い建物のすきまを進んでいくと、人が数人並んでいるところがあり、父と私もそこに並んだ。なんとなく選挙に行ったときに似て静かだった。並んでいる人たちの先には、壁、がありその壁には、小窓、だけ、があってその向こう側には人がひとりいる。

並んでいる人たちはじゅんじゅんに小窓の向こうの人にプラスチックケースを差しだし、そのかわりに紙幣を受けとり、そそくさと帰っていく。

父も同じようにした。

その前後のことやいつごろのことだったのかなどは一切覚えていないし、あまり言葉もわからないときのことなのに、幼心にふしぎな光景だったためか妙に鮮明に脳裏に焼きついていて、あれはなんだったのだろうとなんとなく思ってはいたが、調べようもないほど意味のわからないことなので夢だったのかもとたまに思いだしてはあきらめた。


最近になってあれがなんだったのか知ったあとでも意味がわからないままだけれど、意味わからないほうがおもしろいからいい。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻