恋と鏡

好きと思うとすべて好き。
恋は盲目とか人がよくいう。

たとえばフレンチブルドッグに恋をしたとしよう。かわいいね。
いや、フレンチブルドッグはほとんどの人がすでに恋に落ちている状態だから、一旦その恋をやめてもらってもいいですか。説明のために。一旦、先入観なしにフレンチブルドッグを見て。

顔しわくちゃ。
背低い。
それだったらブルドッグのほうがいい。
ぷるぷるしててなんか不安。
ずっと鼻がぶひぶひ言ってる。
丸すぎる。
足短い。
弱そう。
自分勝手そう。

いいところがない! 第一印象は最悪。
しかし、ひとたび恋をしたらどうか。

顔のシワに指を入れたいわね。
小さくて小脇に抱えやすいぞ。
ブルドッグはおじさんすぎる、フレンチブルは若々しい。
触り心地がいいのよ。
鼻がぶひぶひ言ってて愉快よね。
丸くて最高だわ。
足短くて最高なの。
守ってあげたいな。
振り回されたいね。

こういうことを指して「恋は盲目」と言う。

しかしながら盲目とはそもそも
場面を限定した病態ではない。
相手のことも自分のことも
見えないからこそ盲目なのだ。

だれかを好きだとおもうと、
じぶんのことも好きだと思える。
いいことのようだが
夢が覚めて死ぬのは自分だ。

金曜までは毎日見ても
かわいいと思えていた鏡が
土日を過ぎたあたりから
いやでいやでしかたなく
目を合わせないようにする。
そこではじめて、ああ、
見えるようになったのだと
心の半分でやさしくなる。

もう半分ではあのひとも
同じであれよと呪詛。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻