てりやき

ランダウリフシッツくんの本名は山田(仮名)という。

ランダウリフシッツくんの家と私の家とは敷地の角が接していた。入り口が反対を向いているので会いに行くにはぐるっと回らなければいけなかったが、それでも徒歩30秒で会える距離にいた。

ランダウリフシッツくんとは小一の入学式で会った。
ランダウリフシッツくんの若くて美しいお母さんと私の母とはそのさらに20年ほどまえから面識があった。それも彼と私が懇意になった理由のひとつである。

ランダウリフシッツくんとは小学生のころよく冒険をした。本人と懐かしんだりはしたことがない。

特に記憶に残っている回をひとつ書こうとおもう。


てりやき

 こうえんであそんでいたゆうがた、ぼくはハンカチをどうろのよこのドブみたいなところに落としてしまった。

 ドブみたいなところの上にはてつのオリみたいなものがのせてあって、ハンカチは見えるけれど手はとどかなかった。

 ランダウリフシッツくんとぼくは木のエダ2ほんをてつのオリのすきまからさしこみ、ハンカチをはさんでうまいことひきあげた。これはかんたんにはいかず、なんどもしこうさくごしたけっかだ。あたりはくらくなっていた。

 ハンカチはばっちいきがしたので手でもたずに、木のエダのさきではさんだまま、いえまでかえった。

 そのとちゅう、びしょびしょになったハンカチのことをてりやきとよぶことにした。どちらかがこれのことをてりやきと言ってもうかたほうがたしかにてりやきだねって言っててりやきってよぶことになった。

 ランダウリフシッツくんのいえのまえでは、かえりのおそいぼくらをしんぱいしておかあさんたちがおこっていた。

ぼくらはおこられるこわさよりもハンカチのサルベージにせいこうしたことのうれしさがかって、
「みて、てりやき」
とほうこくした。

ランダウリフシッツくんのおかあさんはすこしわらった。やっぱりてりやきであってたんだとおもった。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻