猿同一性

起きてすぐ鏡にむかった。
下地を塗る。
まぶたにはオレンジのアイシャドウ。
そこから頬まで覆うように
ピンクでグラデーション。
猿になりたいのか俺は。

昼飯にはパッタイを作った。
「なにをつくったの」と
米国人がいうので
「パッタイもどき」と返信する。
知らないといわれたらどう答えるか。
Mock pad-Thai だろうか。
なにがもどきか。
麺がもどきだ。
米麺を買うのを忘れたのでやきそば。
セロリとパクチーの茎、
前日の鶏の茹で汁。

昼寝をした。
休みだったから。
最悪の夢をみた。

浸水した。ベッドだけが海に浮かぶ孤島のようになった部屋。
ベランダから壁を伝って屋根に登ってみると、この集合住宅の屋根にはネオンの看板があるのをはじめて知る。なんとか荘とでも書いてあるというのか。
その横に先客あり。若い男が足を組んで眠っている。どうやら彼の部屋は天井まで水が来てしまったらしい。私はかろうじてベッドがあるから、部屋に帰った。
寝そべってスマホで調べてみると、大水の原因はこうである。
どこかでSDGs関連の水撒きイベントがあった。水撒きをして環境に優しく温度を下げようというわけである。それに使うために集めた水が余ったので、企業だか暇な富豪だかは知らぬが主催者はその水の入ったタンクをヘリで持ち上げ、上空で逆さまにさせた。それがたまたま私の住んでいるマンションの上だったので、水浸しになったのである(どれだけの量の水なわけ)。

すごくこわい夢。
ぼくは目を覚ました。
夢から覚めるといつも、
自分のからだが自分じゃない。
そして今日はそれがひどかった。
ぼくには妹がいるきがする。
お母さん、ぼくって妹がいたっけ。
おかあさんにきいてみる。
お兄ちゃんしかいないでしょ。
そうだっけ。
考えれば考えるほど、
ぼくには妹がいた気がする。
しかもぼくは8さいじゃなくて、
ひとりぐらしをする大学生だし。
お母さん、へんなこといってるのはわかってるから。ぼくがへんなこといってるのはわかってるから、病院には連れていかないでほしいんだけどね。
ぼくじゃない気がするの。
別のもうひとりの生活があって、
今日はたまたまぼくなの。
でも夢のなかにも別のぼくがいるの。
どっちがほんとうだかたまに
わからなくなってしまう。

叫びながら起きる。
鏡を見て確認する。
赤い頬。猿になりたいのか?
連続性がある。
同一性があるぞ。
ぼくは今日もおかしい。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻