はるかなカプセル

カプセルをふたつぶ、
たったそれだけで
体が輪郭になった。

端折らずに丁寧にいえば
服用から数時間で
四肢は周囲の物質と同化し、
ふわふわと行き場をなくした。

そこで体を確かめる。
するとたしかにここにある。
眠るまえのまどろみのような
体のいどころを曖昧にして
かろやかになったと感じさせるのが
感冒薬のしくみ。

ぼんやりとした全身のまま、
あの子はまだじぶんの体に
毎日の薬を欠かさずに
飲ませてあげているだろうか、
考えた。
あの子の体は、
夢がたくさん詰まった体は、
どんなにいどころがなかったろう。
どんなにふわふわと
生きた心地のない体を
毎日確かめていたのだろう。
売られている薬、
ふたつぶごときで
こんなにあやふやになっている、
ぼくには想像もつかないほど
はるかにぼやけて見えた
世界だったろうか。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻