朝四時の音

昼夜が逆転する。
早朝の父を思い出す。
ぼくはお父さんのことが嫌いだった。
母もお父さんのことを
ずっと嫌いだしいまも嫌っている。

父は運転士をしていた。
タクシードライバーかタクシーの運転手という呼び名が一般的だが、敬意を込めて運転士と呼ぼう。なんかかっこいいだろう。

タクシーの朝は早いぞ!
四時には起きる。
五時には家を出る。
そして次の日の昼まで働く。
昼に帰ってきて、寝る。 
その日は「明け」というやつで
一日中寝ている。休憩中というかんじ。
次の日の早朝また出社する。
そして次の明けがある。
その明けの翌日が平休である。

不規則。
よく何十年も勤めたものだ。
体を壊さず事故もなかったのは奇跡。

こんなぺちょもけを養うために
そこまでしてあんたすごいよ。
おかげさまでぺちょもけから
かなり読み書きのできるぺちょもけになったよ。

さて、この男は
三男をもうけることとなる。
第一子は作業着の労働者となった。
第二子は、
おまえらのように油まみれで働くのは
いやだからといって、
公務員になった。
ひどいいわれようである。

そしてわたしはぺちょもけである。
ごめん。
唯一大学まで出ておいて
読み書き可能ぺちょもけでごめん。

あのころ、
不安で眠れないとき。
窓の外が白んでくるのと同時に、
父が起きだすのが見えた。
母が前の日の夜
アイロンをかけたシャツ。
ベルトのバックル。
ちゃぶ台で淹れるコーヒー。
マグカップにぶつかるスプーン。
スポーツ新聞。

私だけが聞いていたあの音たちを
忘れない。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻