準備
準備が必要である。
俺、父親がさ、小さいころよく家の軒に網張って、鳥捕まえて、成田山に逃してた。
天井を指差した腕の内側を、そちらが顔かのように見た。
目を合わせないように。
「おまえバナナ食うか」
「きみ、バナナ食べる?」
「あんまり食べないです。食べたらうまいんだろうけど。……こないだカラオケ行ったんすけど」
へえ、カラオケとか行くんだ。なに歌うの? だれと二人で行ったの? 女の子?
なにか私は声が変ではなかろうか。甘えたような声を出していまいか。そればかり考えて一日が終わる、明日の夜は泣かじというのに。
「バナナ食べる?」
「バナナは食べないですね」
「じゃあおじさんがジュースおごってあげよう」
なんで?
もっと白い部分教えて。
姿見は寝室には置かなかった。
絶対にね。
腐るまえに見つけてくれてありがとうと、明日いうために、その準備が要る。
でも体が動かない。
きのうきょう通りかかった、よその家のあじさいの青を想起しては流れる川、想起しては流れるみず。
五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻