わからせ屋

「だれの」と不満げに吸い殻をにらむ。「ああ、おなじか」自分の吸口とおんなじ柄だったので安心する。だれの? お前の前髪は、耳たぶの穴は、押し返してくる肉は、押し入ってくる肉は、優しい指は、だれの?

人間のかたちの戦闘機に乗り込んで戦う少女たちのアニメーションを見る。所有する、依そんするということがこの作品の根幹にあるテーマである。一話では結婚という言葉が記号的に用いられている。行動原理が社会制度と表裏一体となっているところに世界観の厳格さを感じる、硬派な作品である。好きとか嫌いとかの話をしていないところがよい。本当は思ったことをぜんぶ君に話したいのだけれど、わからせるというのも暴力だからやめよう。

所有の欲求に手を合わせて拝む。それも愛のかたちである。所有されたいという欲求よりも純粋で美しいなあ、わたしは私自身なにも欲しくないのだ。好きなものをたくさん手の中に欲しい、目の前に見たい、それだけあれば生きつづけることができたのに。欲しがられたいとしか思っていない、価値がない。欲しがらない人は価値がない、何も持っていないから利用価値がないのだ。わたしはからっぽのままどこまでも行ける。

コーヒーのタイミング、煙のタイミングを覚えた。
「呼吸だよ。締めて、弛めて」
うんざりした。いろいろなことを教えたい。どれだけの虚無が広がっていることか、この体の中に、ひらいて見せびらかしたい。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻