世界でいちばん

文字のない絵本が
三年生全員に配られた。
自分勝手に物語を
つくっていいのだって。

最初のページは男の子と
一本の樹だった。
ページをめくるごとに
男の子から少年、青年、壮年と
年月を経てゆき、
最後のページは
ひとつの大きな切り株に
腰を下ろして頭を垂れる老人。
外国の有名な絵本である。

生徒たちが勝手に作った物語は
教員たちに審査され、
その結果
私の提出したものが一番になった。
その科目の先生と仲がよかったので
これはひいきだと思った。

夕飯のときに両親に報告すると、
父が父らしからぬことを言った。
「どんなにへんだと
わらわれて、からかわれても、
いちばんになれたら
それでいいんだよ」

おとうさん、
ぼくが笑われてるの
知ってたんだね。
やっぱりぼくって
お父さんから見ても変なのに、
お父さんは
言わないでいてくれたんだね。
おとうさんも
なんかへんだもんね。

いちばんになれたら
それでいいのだ。
あなたがだれかの世界でいちばんなら
あなたは世界でいちばんなのだ。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻