ここより

線をまたいだ。
ここよりまえとあとで
なにかちがう。
とても怖いことだとおもう。
ぼくはずっと
おなじままがいい気もする。

だからといって
時間はとめられないし、
すべては変わりゆく、
朽ちゆく、消えゆく、
さいしょに還ってやりなおし、
永遠に同じ夢に
とどまろうとする気持ちは
はやくに捨てたら
楽になる気持ちだ。
捨てずに持っていても自由よ。

言葉を信じたら
葉っぱが全部裏返るような
海が全部空に還るような
人がみんなあぶくに戻るような
そんなこわさがある。
言葉を信じたら。

鉢をぶつけた拍子に花が咲いた。
水たまりふんだら光になった。
人と泣いたり笑ったりした。

しずかに変わっていっても、
さいごは知らない人になっても、
寂しくないように
みんながいま
歩いているわけだ、
そうか、わかりました。