まるごとの月

それでだれかが困るかといえば
困らない。
だれにも迷惑はかけていない
言い逃れしようとおもえば
わたしのせいじゃあ、そもそも。
問題はけれどももちろん、
そこではなくて、
わたしがうまくやりおおせれば
済んだところで
うまくできなかったことでした、
いつもじぶんのておち。

ことしさいごだからと
みあげた満月から
波紋が広がっていた。
気のせいなんかではなく、
誰に聞いても波紋が広がっていた。
私はこういったもののことを
暈(かさ)と呼んでいる。
しかしこの語はあまり
一般的ではないかもしれず、
伝わらないことが多い。
暈のことを科学的にではなく
感覚的に言い表すことばは少ない。
暈としかほとんど言いようがない。
あれはあきらかに月の暈だった。
火星人から
月のよこにある小さな光点が
火星だよと教わる。

かぶを買って帰り
十字に切り込みをいれてから
ほかの具材と鍋で煮て寝た。
あくる昼、火星人がやってきて
かぶのシチューを食べた。
口の動きが宇宙人だといわれた。
火星人に地球の口の動かしかたを
教えたが、
うまくできていなかった。

分身のようなもの、
家族のようなもの、
姉妹のようなもの、
兄弟のようなもの、
あらゆる関係性を
似たもので言い表す。
かりに我々のすべての魂が
もとはひとつの球だったとしたら
かみさまは食べやすいように
十字に切れ込みをいれたのだと
妙に納得した。
愛ゆえに我々は分かたれたのである。
同じにはなれない。

ひとりひとり違う星の光だと思おう
たとえ体がどんなに近くにあっても、
たまたま今日ちかくにあった星のこと
そんなに考えてもしかたない。
やめ。

五本指ハムスター✌🏻🐹✌🏻