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オレンジフレーバー #3



#3 過去編 マスターとユウリとカオリ

明(夕暮れ時イメージ)

 カオリが上手のテーブル席で大きくなったお腹を摩っている。
 カウンターの奥からヨシキ(過去のマスター)が出てくるがカオリは気が付かないまま、お腹に話しかけている。

カオリ「ユウリー聞こえてるかなー?ユウリー?あなたのお名前はね、優しいに理科の理って書くの よ?あ、まだ理科なんて言っても分からないかー・・・なんて言ったらわかるかなー?ユウリは今どんな夢を見てるのかなー?パパの夢かな?それともママの夢かなー?あ、両方か!パパとママの 夢を見てるんだねー?夢の中のパパとママは優しいのかなー?それとも怖いのかなー?優しいに 決まってるわよねー?」

ヨシ(過去マスター)「・・・」

カオリ「・・・私、いいお母さんになれてるかなー?」

ヨシ「・・・」

カオリ「・・・なりたいな。ユウリのお母さんに

ヨシ「・・・ったく、なってるじゃねーか」

カオリ「えっ!起きてたの?」

ヨシ「今起きた。ここでブツブツ呟いていられたらそりゃ目も覚めるだろ」

カオリ「あ・・・ごめん」

ヨシ「いいよ。それにしてもなんだよ。お母さんになりたいなんてよ?」

カオリ「それは・・・」

ヨシ「・・・別に言いづらいなら言わなくてもいい。でも、一つ言っとくが、お前はもう一人の子を持った立派な母親だ。それは間違いねえ」

カオリ「・・・ありがとう」

ヨシ「あ?」

カオリ「一回しか言わない」

ヨシ「はあ?なんだよそりゃ!ったくよー!」

カオリ「あんまり声出さないでよ!ユウリが起きちゃうでしょ!」

ヨシ「お、おお・・・わりぃ」

カオリ「もう・・・ヨシキと一緒にいると騒がしくてしょうがないんだから・・・」

ヨシ「なんだよそりゃー?まるで俺が一人で騒いでるみたいじゃねえか!」

カオリ「一人で騒いでるじゃなーい!」

ヨシ「なんだよぉ?もういっぺん言ってみろや!」

カオリ「・・・すごい」

ヨシ「ああ?」

カオリ「これだけ騒いでるのにスヤスヤ寝てる」

ヨシ「・・・確かに」

カオリ「さすがはパパの子ね」

ヨシ「そりゃお前の血だろ」

カオリ「いや私そんなに図太くないもん」

ヨシ「俺だって寝てる最中に騒がれたら起きる」

カオリ「・・・」

ヨシ「もしかしてこいつ大物になるんじゃないか!?」

カオリ「そっか・・・そうよね!この子は・・・」

ヨシ「どうした?」

カオリ「きっとこの子ならわかってくれる」

ヨシ「何を?」

カオリ「ヨシパパには関係ないことよ~」

ヨシ「なんだよヨシ、ヨシ・・・ああー!なんか内蔵がざわざわするっ」

カオリ「ヨシパパ~」

ヨシ「やっやめろ、そうやって呼ぶなって!」

カオリ「やだ~」

ヨシ「ったくちょっと奥見てくる(カウンター奥へ)」

カオリ立ち上がり、そのまま上手の面へ。
ゆっくりとカオリにスポットが当たり、下手の面にも同様にスポット。ユウリがその中へ。

カオリ「・・・ヨシキ、ごめんね。今までありがとね。・・・ユウリをお願いね。・・・ホント、頭悪くて、素直じゃなくて・・・ごめん・・・ね。ユウリ、ヨシキパパの言うこと、ちゃんと聞くのよ?それじゃ・・・バイバイ・・・(外へ)」

ユウリ「お母さん、あなたはどんな人ですか?」  

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