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ViViと自民党というコラボが織りなす認知的不協和

講談社が月刊発行しているファッション雑誌「ViVi」が自民党とタイアップして、Tシャツをプレゼントするキャンペーンを打ち出した。(冒頭アイキャッチ画像はキャンペーンサイトから引用させていただきました。)

個人的には、自民党が今年に入ってミレニアル世代やZ世代へのアプローチを強めたことは注目していたし(たとえば「新時代の幕開け」)、それが若者世代にとって政治を考えるきっかけになるのであれば喜ばしいものでもあると考えている。実際に立憲民主党のインスタグラムなども面白い試みだと感じていた。

しかし、RTやリプライを見てみると、どうやら今回のキャンペーンはかなりネガティブに捉えられている。タイムラインに流れる様々な方の抱く「違和感」、その正体を突き止めるには少し時間が必要だった。

違和感の正体は、いわゆる「認知的不協和」である。

このキャンペーンを知らない人が、ViViのTwitterではなく、ViViのキャンペーンサイトを上から読んでいけば、おそらく最下部に「自民党」が問い合わせ先になっていることに驚くだろう。それもそのはず。それ以外に本キャンペーンサイトには自民党の文字はないからだ。

このキャンペーンサイトでは、「わたしたちの時代がやってくる」、「こんな世の中にしたい」というコピーのあとに、

Diversity いろんな文化が共生できる社会に
Express Yourself 自分らしくいられる世界にしたい

といった様々な未来への希望が語られる。それ自体は非常に素晴らしいもので、正直、いくつかのTシャツは職場に着ていきたいくらいのものだ。

しかし、今回のキャンペーンをネガティブに捉えた人々にとって、それらのコピーは自民党の従来のスタンスとは矛盾する内容ではないのかと、脳内で認知的不協和が生じた。つまり、自民党の従来のスタンスとViViのキャンペーンに書かれた内容が一致しておらず、その矛盾に気持ち悪さを感じてしまったのだ。
(もちろん、そもそも雑誌等を用いたキャンペーンそのものを批判している方もいるが、それは各政党がテレビCMや新聞広告を出していることとの線引きができておらず、特にそのような批判には新しさがない。)

アメリカでは政治的なターゲティング広告が進化していて、かなり明確な戦略のもと、潜在的な支持層へのダイレクトマーケティングを行っている。しかし、今回のViViのキャンペーンは、ダイレクトマーケティングというより、とりあえず若い子たちにアプローチしてみよう感が否めず、これはむしろ講談社側で、あるいは広告代理店側で、より洗練された内容にできたはずである。誰に向けた広告であるかが曖昧なものは、政治上はタブーである。なぜなら本来であればターゲティングしたくなかった反対側の陣営にまで広告がリーチしてしまうからだ。

これは自民党のミスというよりも、広告代理店あるいは講談社側の怠慢であると考えるが、実際に政治的なターゲティング広告なんぞ専門家が数えるほどしかいない日本において、「やってみなきゃわからん、えいや」で進めた節もあるのだろうか。

他方で、THE MALLがここぞとばかりにカウンター的に類似のキャンペーンを始めたあたりは、非常に巧みな戦略であると唸らざるを得ない。


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