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しっかり押さえる! 重要事項説明のお話-その2

1 はじめに

皆さん、こんにちは。不動産弁護士の利根川です。

今日も、前回に引き続き、不動産の重要事項説明についてのお話です。

(前回の記事はコチラ↓)
https://note.com/tonegawa0701/n/nbc78466e5162


今回は、重要事項説明の説明義務違反があった場合のリスクの具体的な内容についてご説明します。

2 宅建業法上の処分リスク

宅建業者が重要事項説明の義務(宅建業法35条1項)違反した場合、指示処分、業務停止処分の対象となり、情状が特に重いときは免許取り消しの処分を受けることになります(宅建業法65条1項、2項2号、66条1項9号)。

3 民事上における損害賠償リスク

売買仲介や賃貸仲介において、仲介業者の説明義務違反が認められる場合、買主や借主に対する債務不履行、不法行為が成立し、仲介業者は、買主や借主に生じた損害を賠償する責任を負うことになります。

ここで注意しなければならないのは、例えば、物件に契約不適合(瑕疵)がある場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負いますが、これとは別に、並列的に、仲介業者の買主に対する責任も成立する可能性があるということです。

たまに、ご相談を受ける際に、仲介業者の方で、「悪いのは売主なんだから、うちは関係ないですよね?」というご相談も受けるのですが、これは間違いで、売主が責任を負う場合でも仲介業者が免責されることにはなりませんので、注意が必要です。

例えば、売買仲介において、物件に契約不適合となる欠陥(瑕疵)があり、これについて仲介業者に説明義務違反がある場合…

① まず、売主は、買主に対して、瑕疵担保責任や売買契約の債務不履行責任を負うことになります。
② また、買主側の仲介業者は、買主との間で、媒介契約を結んでいますので、媒介契約上の義務違反ということで、債務不履行責任や不法行為責任を負います。
③ 更に、売主業者は、買主とは契約関係にはありませんが、説明義務違反があれば、不法行為責任を負うことになります。

これらの責任は、全て、買主に生じた全損害が対象となりますので、場合によっては、各当事者が、買主から損害額全額を請求される可能性があるということになります。

4 民事上の損害賠償の内容と範囲

では、仲介業者の説明義務違反がある場合に、どのような費用が、損害として認められるのでしょうか?

売買仲介の事案などで、損害として考えられるのは、これらの損害です。

・ 売買契約締結のための諸費用(印紙代、登記手続費用、ローン事務手数料、測量費用、管理費、不動産取得税、固定資産税など)
・ 買主が売主に支払った手付金、内金
・ 買主が売買代金を金融機関から借り入れた場合の利息相当額
・ 仲介手数料 
・ 契約不適合が存在することにより土地・建物が減価する場合における、売買金額と適正価額との差額分
・ 契約不適合の修補が必要な場合の修補工事費相当額

特に、物件に契約不適合(瑕疵)などがあり減価する場合や、契約不適合箇所の修補が必要な場合などには、損害額が大きくなる可能性が高いので、注意が必要です。
このように、損害の内容によっては、仲介業者が受領した仲介手数料を超える損害の賠償責任を負うリスクがあるので、説明義務については、十分に注意をする必要があるのです。

5 まとめ

このように、重要事項説明において、説明義務違反がある場合、宅建業者は、宅建業法のリスクはもちろん、民事上においても、大きな損害賠償義務を負う可能性があります。
こうしたリスクを避けるために、重要事項説明を行うに際しては、十分に物件の調査を行い、慎重に説明内容を検討することが必要となります。

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