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山とTONBIYA WORKS

山での出会い

会社員時代に全国の伝統工芸品を百貨店などに卸す老舗企業で企画開発をしていたときに「木製の国産品の浸透性の低さ」に疑問を抱き、林業や製材から消費者に届くまでの流通に課題があることを感じて、木工の世界に飛び込みました。

奈良県の林業の起源は、7世紀飛鳥時代に遡ります。寺院や宮殿などの大規模建築の際に檜などの優良の材木の伐採が進み、明日香地方では、676年に天武天皇より森林を保護するための禁伐令が出されました。

奈良の吉野地方は、足利末期(1500年)ごろに造林が行われた記録があり、人工林の起源と言われています。

豊臣秀吉の時代には、吉野地方の木材が大阪城や伏見城に使われました。その後、徳川時代には、幕府の直接の領地となりましたが、住民たちは伐採などを仕事とすることができ、樽丸の製造など木材の利用技術をスキルアップし、販路を広げていきました。それと同時に造林が進められるようになります。

1800年代後半に吉野郡川上村の山林地主「土倉庄三郎」が開発した「土倉式造林法」により良質な木を育てる方法が確立し、住宅用造作材が「吉野材ブランド」として全国に出荷されるようになりました。

吉野で育つ杉やひのきは、三世代前の先人たちが植えて育ててきた木だとも言えます。TONBIYA WORKSは、続いてきた環境や技が途切れてしまわないように職人さんたちと良い関係を築きながら自身も含めプロダクトを作っております。

森がもたらしてくれるもの

TONBIYA WORKSのプロダクトのコンセプトは「森を感じる」。
使った人が、奈良の山里に思いを馳せ、森を想っていただくきっかけになればと考えています。

森に落ちた一粒の雫が、地中に染み込み、湧水として地上に現れ、川として流れていきます。いずれ川は海にたどり着き、やがて水蒸気となって雲になり、森に一粒の雫として落ちるようにすべては繋がっています。
森の落ち葉を微生物が分解して栄養たっぷりの土の中を通った水はやがて川となり、水と一緒に運ばれる土は流れの緩やかなところに溜まりそこでは、田畑として作物をつくります。水はやがて大海にながれプランクトンたっぷりの海には、たくさんの魚介が集まります。

山や森が守られるということは、間接的に私たちの生活を豊かにしてくれます。しかし、普段の生活の中で山や森に触れる機会がないので、山が抱えている課題について自分達の問題として考えることはありません。

無関心のまま山の課題は深刻化し、気がついた時には私たちの生活を脅かす大きな問題になってしまいます。

TONBIYA WORKSが奈良の木を使ったプロダクトにこだわるのは、生活の中で木に触れることで、山や森を感じてほしいからです。

暮らしに寄り添うプロダクト

奈良の木でできた曲げわっぱのお弁当箱は、TONBIYA WORKSの看板商品です。杉、檜にはその材中に含まれるα-カジノールが含まれていて、黄色ブドウ球菌や大腸菌などへの抗菌作用が認められています。

木のお弁当箱は、木の表面に細かいミクロの凹凸があり、その凹凸が水分を吸収したり、空気を通したりすることで食べ物のおいしさを保ちます。

そんな天然のエキスを集めたハーバルウォーターも人気商品です。檜は、フィトンチッドという成分の含有率が高いため伐採後も発散し続けます。フィトンチッドは高い抗菌性とともにストレス解消に効果があります。
檜の香りは脳の活動と自立神経活動を鎮静化し、リラックスさせることが分かっています。

奈良の杉や檜は、木々の間隔を空けすぎないようにしながら何度も木を間引きし、大陽光が効率的に差すように森林の密度を調整しています。その後も何度も間引きをし、70年以上丁寧に手をいれて育てるため、等間隔の綺麗な年輪ができ、年輪の幅が狭く強度のある木に育ちます。

3世代に渡って育てられた木のプロダクトは、暮らしの中で長く大切に使ってもらえる、木の持つ自然な特性を生かした生活アイテムです。

森と町を結ぶ先にあるもの

奈良の木を使ったプロダクトには、それぞれストーリーがあります。

植えられて製材になるまで70年以上、3世代にわたり丁寧に育てられます。伐採された木が市場に出るまでには、幾つもの工程を経て、そこにはたくさんの人が関わります。

たくさんの人の暮らしが林業の振興にかかっています。山に携わって働く人たちの生活が安定することで山が守られていきます。

山の問題は水産業や農業にも影響していきます。
木のプロダクトを生産し、たくさんの人に届けることで、森や山を身近に感じてもらい、今の山が抱えている課題に関心を向けてもらい、その中で同じように現在の状況に不安を抱えている人で、志のある人が繋がって新しい何かを踏み出していけたらいいなと想っています。

負ではなくプラスの森の循環を作っていきたいのです。立場が違っても同じ気持ちで行動していける仲間ができるとまた、違った未来を見ることができると思っています。

受け継がれてきた知恵や技術が受け継がれずに消えてしまわないように。強さと美しさを兼ね備えた奈良の木の良さをたくさんの方に知ってもらうために。

木と人を繋ぐこと。それがTONBIYA WORKSの目標なのです。


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