きょうの休みは気散じな君のせいにする

「雪がふったし。金閣寺がきれいやから、きょうはおやすみ」
冬は雪のせいにして、春は花の、夏は川の、秋は紅葉のせいにして、君はたびたび授業をサボった。

僕はいつも君の誘いを断って、いつもノートを取る係で、だけど、それは嫌じゃなかった。君がサボるのは板書を写すだけの、僕だって正直つまらないと思うような講義だけだし、僕がいない講義は平気で単位を落とすし、真剣に受けると決めた授業はぶっちぎりの成績を取るし、何より君は。

休日にあちこち僕を連れ回し、おばあちゃんがな、あんたはきさんじな子やからていわはんのやわ、しゃあないねん、うちがこんなんなんは、と、ころころ笑った君の姿は、十年経っても目に鮮やかに焼き付いている。


京で「朗らかで小気味よい」を表す言葉は、東京では「気晴らし」を意味するらしい。

ねぇ、気散じな君、今も京都で気散じに出かけていますか。
僕は今日、めずらしく、会社に行くのと逆方向の電車に乗っている。

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