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子育てでイライラしたけど、ちょっとの幸せでその日は楽しくなっちゃったから割とどうでもいいイライラだったのかもしれない

これはオチも何もない油森家の親子の日常。

Eテレがまだテレビ体操を放送している朝6時半、3歳の長男と1歳の次男がほぼ同時に起きた。
ママぁ〜、抱っこぉ〜!ダッコー!ダッコー!
寝室から響く泣き声。すっきり起きられなかったパターンだ。
「ほいほーい、ごめんごめん。ママこっちにいるよー。」
書きかけのnoteを下書き保存しノートPCをシャットダウンして、リビングのソファから立ち上がり子どもたちを迎えに行く。

普段はそこまで抱っこ抱っこちゃんではない2人だが、体調が悪いと抱っこして欲しくなるようだ。朝から抱っこをせがむ兄弟をいなしながら、長男のリクエストどおり、朝ごはんにおにぎりを握った。
4日前に手足口病と診断された次男は食欲が回復し、わしわしとおにぎりをほぐしながら手づかみ食べをしている。反面、長男は食が進まない。

結局おにぎりには手をつけず、バナナなら食べられると長男が言うので、バナナを取りにキッチンに向かった。その間にやられた。
次男がテーブルに投げつけた。バラバラに瓦解したおにぎりがつまった食事用エプロンを。テーブルの天板から側面、床の上にかけて米粒まみれ。もちろん次男本人も米粒まみれ。あたり一面が大惨事だ。

うへぇ、とゲンナリしつつ、とりいそぎ持ってきたバナナを長男に渡す。その様子を見ていた次男が、ぼくにも!と言わんばかりに「オッオッ」と声を出す。
ステイステイ、そのまま食事椅子で待っているんだぞ。その米粒オバケの姿で床に降りるなよ。(本来、幼児用食事椅子は子どもだけで乗り降りしてはいけないのだけれど、次男は少しばかりチャレンジ精神が旺盛で、落っこちるのをいとわず自分で椅子から降りようとする。推奨される使い方ではないが、落っこちるよりはマシだろうと、食事椅子の横に踏み台を設置して自分で乗り降りできるようにしてあるのだ。)
バナナを取りに行く数秒の間に、次男は床に降り立った。ニタァと笑いながら小さなオバケは米粒をまきちらしてリビングを駆け回る。
うわぁ、ウワァァァァァァ!!

子どもたちがバナナを食べているすきに米粒を拾う。落ちているのをうっかりネチャと踏みつけながら、ソファにへばりついたのをひと粒ひと粒剥がしていく。

背後でボリボリボリ、と不穏な音がした。次男が痒そうに、手の甲に爪を立てて肌を引っ掻いている。
かかりつけ医は言っていた。
「手足口病は痒くならない病気なんだけど、肌が弱い子はね、ボロボロになりがちだから気をつけてあげて。」
アトピー持ちの次男は案の定、手足口病の進行とともに血まみれになった。そのため、ガーゼと包帯で手の甲を覆うようにしていたのだが、食事中は不衛生なので外す。包帯の再装着がバナナと米粒対応で遅れ、せっかく良くなりかけていた次男の柔らかい手の甲は再び血まみれになっていた。

もう……だめだ……。


またしても抱っこをせがむ兄弟をいなしながら、光を失った目で小児科をネット予約する。次男の肌を案じるかかりつけ医から、週末にもう一度病院に来るよう言われていたのだ。その小児科はお医者さんも看護師さんも受付の方々も、みなさん感じが良くて居心地がいいので早く行きたい。

「今日はチョウナンくん、赤ちゃんだからぁ。チョウナンくんがベビーカーに乗りたぁい。」
はいよ。じゃあ、次男を抱っこして行きますか。
次男は歩きたい盛り。手足口病でここ数日引きこもっているため、興奮気味に靴を履きに玄関へ向かっていた。抱っこ紐は拒否である。仕方がない、フリースタイル抱っこで行こう。幸い、次男は標準よりも体重が軽い。
片腕で次男を抱え、もう片方の腕で17.5kgの長男が乗るベビーカーを押す。横断歩道はかろうじて抱っこさせてくれたが、あとは地面に降ろせと暴れる次男。良いよ、良いよ、小児科までの道は歩行者に優しいつくりになっている。君のペースで歩きたまえよ。


ようやく小児科に着いた。
アレルギー持ち、アトピー持ちの次男はこの病院の常連だ。顔を見ただけで、受付の方はにっこり微笑んで受付順を記した番号札を渡してくれる。
ほどなく診察室に呼ばれる。かかりつけ医に、次男の肌は良くなっていて、お母さん頑張ったと褒めてもらえた。ああ、報われる。

次男から遅れること2日で発熱し、半日で解熱、発疹はほとんど出ていないがおそらく手足口病がうつったであろう長男も診察してもらった。
「手足の発疹は大したことないけど、わぁ〜、口の中が、ひどいや、こりゃ。」
「チョウナンくん、朝ごはんゴックンできなかったの。」
長男の報告にお医者さんは顔をほころばせながら言う。
「そりゃあそうだ。今日はね、ごはんのときに好きなものを食べなさい。ゼリーでもプリンでもアイスクリームでも。」

次男に処方された薬を受け取り(手足口病ではなく皮膚の薬)、近くのスーパーへ。スーパー大好き長男は、ベビーカーに乗りたいとは言わず売り物を眺めながら歩く。長男の食事にプリンやアイスもよいのだが、乳製品アレルギーがある次男の誤食を防ぐ精神力が残っていないため、バナナとゼリーを買い込んだ。長男がバナナとゼリーを食べるなら、次男も同じものを食べたがるだろう。同じでいいや。

おっと、子どもたちの食事がバナナとゼリーでよいのなら、私のごはんも手が抜けるではないか。
たまにはインスタントラーメンをキメよう。「マルちゃん製麺味噌味」特売で5食228円。

お会計はPayPayで。
『ペイペイ!』

1000円キャッシュバックだ!
PayPay神の声が聞こえる。
「子育ておつかれさま。子どもたちのゼリーとバナナはワシが買うたろやないか。」
サンキューPayPay神!

疲れたからベビーカー乗りたくなっちゃったぁ、とフニャフニャする長男に「いま次男くんが乗ってるからなぁ。あ、どっちが速いかな〜?ママのほうが速い!」と勝負を挑みながら家にたどり着く。


ゼリーとバナナを目の前にホクホク顔の子どもたちと、熱々の味噌ラーメンを持って遅れて食卓につく私。
「チョウナンくんも、ラーメン食べたぁい!」
「マー!タァイ!」
兄弟の催促に、ふふふ、口が痛い人たちにはあげられないのだよ、とうそぶきながら私はラーメンをすする。

小児科受診を転換点に、朝とは180°違う気分で子どもたちと接する母であった。

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