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男性医師の未来は安泰なのか

聖マリアンナ医科大学の入試について、ニュースになっていましたね。
雑にまとめると「浪人生、女子受験生は一律減点」というもの。
入試において、受験要項には記載されていない不正な点数調整が課せられる。
これほどモヤモヤするものはないわけです。

「女性は出産育児でパフォーマンスが落ちる」
「故に、男性医師を増やした方が医療現場にとって良い」

言いづらいけれども心の底ではそう思っている人が多いのだろうな、というなんともモヤモヤする主張を、 SNSやyahooニュースのコメント欄から感じます。

この件で取り上げたいのは2つ。

・受験要項に記載していない点数調整はそもそもNG
・女性医師は医療現場に不利益をもたらすのか?

ということ。

水面下の点数調整はそもそもNG


これはもう、大原則だと思います。
私立大学はそれぞれ主義主張がありますし、それが私立の特色でもあります。
なので、大学側がそういった意見を持つのは勝手です。
が。
やるならば、ちゃんと明らかにしてからやりなさい、と。
うちの受験問題はこれですよ。これを受験生みんなに解いてもらって、点数順で合格者を決めますよ、と言っているのに、「実は女子は80点減点ね(テヘペロ)」とかされるともう、ただただ卑怯でしかない。

学力試験というのは、フェアであるべきです。

人柄とかボランティア活動とかパフォーマンスとか。
ひとつの物差しで測れないものは、公平性に欠けます。
フィギュアスケートの採点とかそうじゃないですか。芸術点、って言われても判断は分かれる。いろいろな競技でビデオ判定が採用されるようになったのも、審判の個人的見解ではなく、それに公平性を付与するためです。

だからこそ、学力試験はフェアにすべきです。
主義主張があるならばどうぞ、公にしてください。
それを踏まえた上で、こちらは受験校を選びます。

それを後ろめたく思うならば、どうぞ点数だけでジャッジしてください、と。


女性医師は医療現場にとって不利益なのか。


引っかかるのはここかな、と思います。
女性医師がいなければ、医療現場はスムーズに回るのか。

確かに、女性医師は出産育児で業務量が減る瞬間があります。
これは事実。
疑いようのない事実。
そして産休育休という”約一年前からほぼ予期された休職”にも対応できないほど、医療現場は人手が足りません。

が。

これ、女性だけに限らないと思うんですよ。
医療現場で長らく求められてきたのは

・長時間勤務に耐えられる
・多少の理不尽にも我慢する
・ライフスタイルの変わらない
・健康なサイボーグのような人間

だったんですよね。
これに当てはまるのがたまたま

育児家事を全て妻に任せることのできる既婚男性

だった、というだけで。


でもこれ、そう遠くないうちに、というか、すでに崩れていると思うんですよね。

私自身、もともと結婚願望はありませんでした。
それが今の夫と出会い、事実婚も頭に起きつつも入籍。
このまま子なし(DINKS)で働き続けるんだろうな、と思っていました。

が。

まさかの、うつ病発症。


これはもう、本当に本当に想定外でした。

それまでは毎日フルタイム勤務、月に4−5回の当直、時間外労働当然ですよね、といわんばかりに働いていたのですが、ある日突然それらができなくなったわけで。

子どももいない、介護する両親もいない。
医療現場にとっていわゆる「不利益」のない人間だったはずなのに。

医師たるもの、長時間労働すべき

という根拠のない思い込みは、そのまま病気になった自分に跳ね返ってきました。

うつ病を発症した私は、そのまま休職しました。
そしてその穴は、職場の他の先生方が埋めてくださったわけで。
いきなり業務量が増えた先生方は、本当に大変だったと思います。

その後、投薬しつつ復職したわけですが。
それを機に、痛感したわけですよね。

一生、元気にずっと働ける人間なんていない

ということに。

女性医師を減らして、男性医師ばかりにすれば医療現場は安泰なのか。
多分これは、No、だと思います。
理想論とか希望とか、そういうのを排除しても、No。

バリバリ働いていても、不意に病気になる人はいるでしょう。
少子高齢化社会が進み、親の介護が必要になるかもしれない。
労働人口が豊富だった昔とは違うのです。
長時間勤務が可能な労働者(夫)や、その労働者を支える家庭ケア要員(妻など)は減っています。

男性医師がこれまで仕事に邁進していたのは、その裏で行ってに家庭ケアを担ってきた人がいるからか、あるいはそもそも家庭を持たなかったからか。
それはどちらでも良いのですが。

男性だから無限に働ける、という時代はもう、終わりにすべきだと思うのです。


かくいう私は、復職後、まさかの妊娠で産休・育休をしているわけで。
これも「母親は育休を取るべき」という無言の思い込みによって取得した育休だったな、と振り返って今はそう思います。

育休についても、夫と話し合ってよけばよかったな、と少し後悔しています。

とにもかくにも。

誰しもがずっと働き続けられるわけではないし。
長時間労働できない人を労働者を労働力から外すのはもう、やめた方がいいんじゃないかと思うわけです。

聖マリアンナ医大で「女子は減点」としていた先生方だって
もしかしたら1週間後にはご家族の介護や看病が必要になって、離職を迫られるかもしれません。

男性だから、女性だからって
安泰な職業なんて、どこにもないんですよ。



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