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産後4ヶ月で専門医試験を受験した話。その2

 ここからは、実際にどんな感じで勉強したかを書こうと思います。

4)試験勉強スケジュール

【産前】1月〜3月

 1月から筆記試験対策を始めました。直近(57回)の過去問が発売されていなかったので、その前の3年分(54-56回)3周を目標に開始。1周目はわからなさ過ぎて落ち込みましたが、やっていくうちに(特にA問題)同じ問題が出るので、徐々に解けるようになりました。

 1周目は調べたり解説を読みながらだったので、時間がかかりました。1日20問を目標に、およそ3週間で終了。1問1問を完璧に覚えるよりは、全体の傾向を把握し、7割程度の知識定着を目指しました。数をこなすごとに徐々にペースアップし、3月までに3年分を3周できました。

【産休】4月〜5月

 産休に入り、勉強道具を持って里帰りしました。

 53、52回も解き始めました。1日50問、1週間で1年分を目標にを目標に過去問を進めました。最終的に、出産までの間に52-53回を2周、54-56回を4周しました。ただしその時点では完璧ではなく、7〜8割が解ける程度でした。

 同時に、4月に入ってから初めて口頭試問の過去問を確認しました。青本やMGH、麻酔科トラブルシューティングを参考に、2年分の解答を自分なりに作りました。かなり時間はかかりましたが、自分で答えを作る練習ができてよかったと思います。実技試験はノータッチでした。

【出産】5月

 5月某日、出産。
 出産後2週間は勉強しない、と決めていたので、5月後半は何もしませんでした。ひたすら必死に新生児育児をしていました。

【〜産後1ヶ月】〜6月下旬

 産後2週間から勉強を再開しました。連日の睡眠不足と疲労で良くありませんでしたが、1日15分でも、という気持ちで勉強を再開しました。

[身体のコンディション]

・連続睡眠時間は1〜2時間程度。1日合計5〜8時間くらい。昼夜を問わず、とにかく細切れでした。里帰りしていたので昼寝で睡眠時間を稼ぎました。夜は基本的に一人で見ていたので、夜間の頻回覚醒・頻回授乳がしんどかったです。(0時、2時、4時、5時、6時、みたいな)

・頻回授乳も疲れました。とにかく母乳分泌を、との思いで授乳していましたが、「吸啜」という物理的な刺激が辛かったです。睡眠不足もあり、夜中、泣く息子を抱きながら呆然としてたことも多々ありました。乳頭混乱が怖くて哺乳瓶やおしゃぶりをなかなか使えず……。息子の泣き声が怖かった時期でもありました。

・会陰切開部が痛かったです。ソファ+円座クッションでも、座るときに姿勢を考えなければならず、気軽に立ったり座ったりできないのが苦痛でした。

[精神的なコンディション]

・話す、読む、聞く、という基本的なことが全てできない or できても多大な労力を要する状態になっていました。

・出産後から文字が読めなくなっていました。出産育児の疲労で本や新聞、PCの画面を見ることができず、文字が滑る滑る。かろうじてスマホは見れたので、それで情報を得ていました。勉強を再開するにあたり、まずはPCで調べ物をしたりお宮参りの手配をするなどして、リハビリをしました。

・これも産後ですが、とっさに言葉が出てこなくなりました。呂律が回らないのと、文章が浮かばないのと両方です。普通に話すことに対する疲労感が出産前の比ではなく、かなり苦労しました。(これについては、産後5ヶ月経った今でもまだ残っています)

[勉強スケジュールとルールづくり]

 筆記、口頭試問の目標(何年分を何周、青本を○月までに一読など)を立てて、そこから1日当たりのノルマを割り出しました。ノルマ作りにおいて以下のことに注意しました。

・1日あたりのノルマを書き出す。ノルマを頭の中で管理しようとするとすぐにキャパオーバーするので、極力、覚えなくても済むようにしました。

・『予備日』を必ず設定する。1週間に2日。土日とか、3日に1回とか。

・疲れた時は無理しない。仮眠と勉強ならば、仮眠を優先する。

・無理をせず、休憩しつつ、可能なら先取りする。ノルマをこなせないと思ったら、細かくスケジュールを見直す。

[勉強再開]

 ふりかえっても、かなりボロボロな状態でしたが、勉強できないことの不安も強かったので、強引に再開。手付かずだった青本を1日10ページ読むことから始めました。

 夜は頻回覚醒だったので、主に昼寝の時間を利用。1日15分〜1時間程度、勉強できたと思います。最初は青本+過去問の両方を1日のノルマにしていましたが、時間と体力がなくて断念。まずは青本を読み切ることにして、1週間に1, 2日くらい、余裕があったときに過去問を解いていました。

【産後1ヶ月〜1ヶ月半】6月〜7月

 産後1ヶ月を過ぎても、頻回覚醒と細切れ睡眠は変わりませんでした。連続3時間眠れればめちゃくちゃラッキー、なくらい。1ヶ月を過ぎたら寝る時間が長くなるから、と聞いていたので、長時間眠れない生活に限界を感じ始めていました。

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 当時の息子の睡眠記録です。とにかく細切れ。昼夜を問わず、細切れでした。特に昼寝が苦手で、日中は誰かの腕の中でなければ眠ってくれなかったと思います。1日10件、昼も夜も帝王切開の麻酔をかけ続けるような感じでした。辛かった。

 もう一つ辛かったのは、いわゆる「黄昏泣き」が生後1ヶ月くらいから始まったことです。夕方のグズリがひどく、17時くらいから就寝するまで泣いていました。泣いて、泣いて、抱っこして、寝なくて、泣いて、ひたすら抱っこしてバランスボールでゆらゆら。あまりに泣くので、具合が悪いのかとオロオロしましたが、特に何もありませんでした。振り返ると、あの頃は「よく泣く時期」だったのだと思います。あまりに泣くので自分を責めたりしましたが、どうしようもなかったと思います。

 そんな状態だったので、集中して勉強に取り組む余裕はありませんでした。とりあえず一読、という気持ちでチマチマ青本を読み進めていきました。

【産後1ヶ月半】7月

 里帰りを終了し、自宅に戻りました。夫の仕事の都合で、帰宅して1週間弱ほど昼も夜も一人で見る生活が続きました。

 その頃息子はと言えば、夜7時〜11時くらいまでは連続して寝てくれたのですが、それ以外は頻回覚醒、細切れ睡眠でした。一方で昼間の覚醒時間が伸びたため、昼の休憩時間が如実に減りました。

 生後2ヶ月余りで、泣かずに起きていられるのは1日のうち10分くらい。抱っこしないと泣いていたので、ほぼ何もできず。昼は寝ず、夜も頻繁に起きていたので、めちゃくちゃ辛かったです。この時期の睡眠時間が一番短かったように思います。

 一人で見続けて4日目くらいに限界が来てギブアップ。ちょうど夫の仕事が落ち着き始めた頃だったので、夜間対応を任せて寝させてもらいました(産後初めての6時間連続睡眠!!)。この頃まで乳頭混乱が怖くておしゃぶりや哺乳瓶を使わないようにしていたのですが、流石に無理でした。

 里帰りが終わってからの1週間は全く勉強できませんでした。息子の睡眠時間が伸びる気配もなく、今後、勉強する時間を捻出するにはどうしたらいいのかを考え始めました。

【産後1ヶ月半〜2ヶ月】7月〜8月

 と思ったら、その翌週、突然、息子が寝るようになりました。

 19時に就寝後、連続して5時間くらい寝るようになり、夜間覚醒も1〜2回に。昼寝は短かったですし、黄昏泣きも続いていましたが、夜間の睡眠時間が伸びたことで気持ちが随分と楽になりました。夜は夫と日替わり交代性にすることで、1週間の半分は連続6時間以上の睡眠を確保できるようになりました。

 それを機に、勉強再開。1日のノルマは青本+過去問。昼間の細切れ時間(30分くらいを2回)と夜(19時〜21時くらい)に勉強しました。ただ、体も疲れていたので、しっかり勉強できるのは1日2時間が限度でした。集中力が保てなかったので、浅く広く、回数をこなすことでカバーしよう考えました。

【産後2ヶ月】8月

 この頃から息子の生活リズムが整ってきました。

 朝7時起床。昼寝は合計2〜3時間。夜は19時に就寝。22時に起こして授乳。その後は朝まで。1週間に1、2回は夜間覚醒や就寝時のグズリがありましたが、かなり体が楽になりました。また、夕方のぐずりも減り、一人でご機嫌で起きている時間も増えたこともあり、気持ちも穏やかになりました。

 日中1時間、夜は19時から途中、授乳を挟んで23時くらいまで勉強していました。体力に余裕がなければ、22時の授乳時に切り上げて就寝しました。ただ、夫の仕事の都合もあり、週5.5〜6.5日は日中ワンオペ で、体力に余裕はありませんでした。

[筆記試験]

 ・過去問を継続。B問題やC問題で採点除外された問題を調べる余裕が出てきました。間違えやすいA,B問題を集中して復習していました。

・各種ガイドラインをダウンロード。問題を解きながら適宜確認。

[口頭試験]

・7月中旬で青本を読み終わっていたので、7月下旬から年度別に解き始めました。

・1日2問をノルマに、1~2週間かけて1年分を解きました。青本と麻酔科トラブルシューティングを参考にしました。図表については、トラブルシューティングがめちゃくちゃ見易かったです。5年分を目標にして、「音読」するように心がけました。

[実技試験]

・青本や某有名サイトでどんな問題が出たのかを確認しました。

・麻酔科学会HPにあるガイドラインをダウンロードし、確認しました。頻出の困難気道や産科大量出血、ACLSのアルゴリズムは何度も見直しました。

・苦手な分野(神経ブロックの解剖、気管切開)を動画サイトなどで確認しました。

【産後3ヶ月〜4ヶ月】8月〜9月前半

 比較的リズムが整っていたので、日中1時間、夜は2〜2時間半くらいを勉強時間に当てられました。

・筆記試験:間違えた問題を覚え込む。

・口頭試問:過去問の音読継続。1周黙読+2周音読は完了。

・実技試験:苦手なブロックとACLS、PALS、DAMのアルゴリズムを確認。DAMに関しては、口頭試問対策も兼ねて気道確保の方法を具体的に言えるようにしていました。

【産後4ヶ月〜】9月後半

 8月9月は比較的順調だったのですが、試験まで2週間を切った頃から、息子の昼寝時間が急に短くなりました。それまで2時間半くらいあったのが、1〜1時間半に。それも結構な寝ぐずり付きなので、日中の疲労度が増しました。4ヶ月に渡る育児+試験勉強で、体力がギリギリだったのもあると思います。ラストスパートをかける時期にスパートをかけられず、日中は隙を見ては体を横にして休み、夜は22時の授乳が終わってすぐに寝ていました。勉強時間は1日2時間程度でしたが、とにかく体調管理に全力を注ぎました。

 直前だったので筆記試験対策のみ続けました。また、週に1日、夫が休みの時は6時間ほど外出して勉強していました。集中して勉強できたのは3〜4時間くらいで、集中力が切れるとガイドラインを確認したり、パラパラと過去問をめくっていました。

 余談ですが、直前期は精神的にかなり不安定になっていました。復職や金銭面での不安、試験に落ちたらどうしようという恐怖、もうあとがないという追い詰められた感覚などなど。次々と漠然とした焦燥感に駆られていて、結構苦しかったです。早く終わって欲しいとばかり考えていました。

【産後4ヶ月半】筆記試験

 息子と夫を残し、前日に神戸入りしました。母乳だったので、前日と当日、胸が張ってめちゃくちゃ大変でした。

 朝、昼はホテル内のローソンで調達。過去問6年分を全部持って行きましたが、スーツケースがめちゃくちゃ重かったです。鉛筆は1ダース削って行きましたが、使ったのは3本だけでした。

【産後4ヶ月半】口頭・実技試験

 筆記試験から口頭・実技試験までは4日しかありませんでした。ですが、ここにきて完全にエネルギー切れを起こし、筆記試験翌日はほぼ寝て過ごしていました。翌々日から勉強を開始しましたが、口頭試験前だというのに声を出す気力がなく、ひたすら過去問を黙読していました。実技試験も、体験談とかを淡々と読むので精一杯でした。

 口頭試験は朝一集合ではなかったので、当日、会場入りしました。青本とガイドラインの入ったipad、資料を印刷した紙、ブロックのポケットブックを持って行きました。

【まとめ】

 以上、産前産後の勉強スケジュールを簡単に書きました。幸いなことになんとか勉強できましたが、勉強できるかどうかは赤ちゃんが寝てくれるかどうかに全てかかっているな、と感じます。特に夜間睡眠の質は大きいと思います。頻回覚醒、細切れ睡眠になってしまっている場合は、家族と交代制にするのが良いかもしれません。一方で、低月齢だと睡眠は安定しませんが、一人で勝手に動いたり離乳食を食べさせる手間もないので、そういう意味では楽かもしれません。

 また、「ノルマを書き出す」「予備日を作る」も地味ですが大事だったな、と思います。乳児がいると、昨日までできていたことが急にできなくなることがあります。休めるはずなのに休めなかった、眠るはずが寝なかったなど。なので、こまめに休みをとって、常に体力を回復するようにした方がいいように思いました。短時間の勉強は疲れますし、集中力の切り替えも大変です。その時間、体を休めた方が、後の効率は良い気がします。

 育児しながらの勉強は3ヶ月から持って4ヶ月が限度でした。これ以上だと疲労が蓄積して続けられなかったと思います。産後半年だったり1年だったりする場合は、勉強開始時期を遅くする、ないし1日のノルマを少なくして始めるのが良いかもしれません。

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