何かを書きたい夜に

 ゲプロを聞き、シャカパチを極め、強いドラゴンズを憎んだあの頃、私は文章を書くことが好きだった。卒業式の答辞では、悪ガキの立派な成長譚を、模試の小論文では、それなりに構成された文章を書いた。書く訓練をしたことはなかったけど、胸を張って“私の言葉”と言えるものを創っていた。が、大学に入ると、文章はビルで拾ってきた言葉だけで構成されるようになった。レポート、エントリーシート、私の存在なんて黒部ダムで作るポカリくらいしか感じられない。自分は広報運動家だと言い聞かせ、コミュ力高めの陽キャを被った。同世代と比較され続け、残ったものは社会に最適化された自動人形だった。
 大学を出たあと、“私”は戻らず、残念ながら自動手記人形にもなれなかった。自分のいない文章を書くことは、デービーバックファイトより詰まらない。自分を筆に乗せられるようになったら、書こうと寝かせた。そして今日、21時くらい。文章への気持ちなんて忘れてたのに、突然よぎった。なんか書きたい。こうして2024年1月12日的文章が生まれた。他人視点とか、誰かに批評されるとか、今出せるベストをとか、枠に収めないでいい。自分の意思の表出を言葉にする作業を、また少しずつ楽しもうと思う。
Tonari 

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