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「SBK presents MINORITY REPORT」のリポート。スケボーキングが贈る、ネオY2Kな夜

12/11(日)にスケボーキングが主催するライブイベント、「SBK presents MINORITY REPORT」がWWW Xで開催された。

スケボーキングは2010年に1度活動を休止。その10年後、2020年に再始動し、同年末に「不気味の谷/キャプテン隊長」という“両A面”シングルをリリース(ディガーにはおなじみかもしれないが、両A面シングルなるオーパーツが90年代後半から2000年代には普通に普及しておったんじゃよ)。

そして再結成からおよそ2年弱。2022年2月にはついにアルバム「THE NEW ALBUM」をついにドロップした。僕は2020年の再結成時のインタビューをblock.fmで担当させていただいたのだが、そこでも話題になった(した)Dragon Ash 降谷建志さん(kj)とスケボーキングの「EPISODE」シリーズの最新作が収録されていて、個人的に嬉しくて打ち震えていたわけで、それくらい、僕にとっては好きなグループのひとつなんですね。

日本でミクスチャームーブメントが盛り上がっていた2000年代初頭の、自分の中のヒーローでもある人たち。ヒップホップやラップ、ダンスミュージックサウンドの魅力を知るきっかけのひとつを作ってくれたのはスケボーキングだったんじゃないかと今振り返ってみても思う。SHIGEOさんや、SHIGEOさんがkjさんとBOTSさん、ILMARIさんと参加していたプロジェクト、Steady & Co.は、当時読んでいたファッション誌「BOON」なんかのカバーにもたびたび登場していたので、ファッションという意味でもかなり大きな影響を受けたし、当時田舎の中学生だった自分にとってはm-floやDragon Ash、RIP SLYMEらとともに最新の「東京」を感じさせてくれる存在がスケボーキングだったのだ。

その20年後くらいに、そんなスケボーキングにインタビューさせてもらったのは非常に幸運な経験だった。コロナ禍に見舞われながらリリースしたアルバム「THE NEW ALBUM」は当時の面影を残しつつ、地に足をつけた視点ながら、壮大なスケールでカオスなサウンドスケープを見せてくれ、いまだにその存在感は自分にとって大きいのだなと再認識させてもらった次第だ。

さて、2022年も年の瀬に行われたスケボーキング企画のイベント「MINORITY REPORT」にはラッパ我リヤ、さらに、GASBOYSが出演。さらに、気鋭のHAPPY POPユニット・iliomoteとDMCワールドチャンピオンとして知られるDJ•ターンテーブリストのDJ KENTAROも参加。懐かしい驚きと、新鮮さを伴ったイベントラインナップがスケボーキングらしいと思った。

特筆すべきはやはりGASBOYSである。スケボーキングのSHUNさんの実兄、上杉圭佑さん、往年のスニーカーファンにはお馴染み、atmosやMAD FOOT!でも知られ、自身のシューズブランド「TIMAI」を手がける今井タカシさん擁するミクスチャーバンドである。早すぎた、と形容されるほど先鋭的なバンドでありDOMMUNEにもイシューされている。

写真とともに、予想不可能なカオティックだけどピースフルな「MINORITY REPORT」をダイジェストで振り返ってみたい。


ラッパ我リヤQ•山田マン・TOSHI

iliomoteとDJ KENTAROさんのパフォーマンスのあとにラッパ我リヤが登場。令和の渋谷で我リヤのライブが見られるなんて。Qが「今日はGASBOYSが来てる。ここが渋谷でいちばん熱いところだから」とMCしていたが、個人的にはまんざら冗談ではない。なんだろう。このエモーショナルな感じ。2000年代初頭にCDを通じて感じていた見たことのない東京への憧れ、そんな田舎の中学生をも巻き込むカルチャーの熱を思い出して、琴線に触れてしまう。

「yeahと言え!」、「Do the GARIYA thing」など名曲が飛び出しつつ、kjさん抜きではあるけど「Deep Impact」(Dragon Ash:2001)もやってくれて、ウルウル来てしまった。

17年〜8年前、高校生の頃、僕はラップをやっていた。地元山梨のクラブやライブハウスでやったり、自主企画のイベントを出演したりしていたんだけど、地元の先輩方と一緒にラッパ我リヤのTOSHIさんが来ていたらしいのだ。嘘か真か、誰かを通じて『「あの子いいね」ってTOSHIさんが言ってたよ』ということを聞いて、しばらくそれを励みに頑張っていたことが蘇ってきた。真偽のほどは定かではないし、TOSHIさんも覚えてないだろうけど、この日のライブがめちゃくちゃアツかったこともあり、あらためてありがとうございましたと伝えたい。

GAS BOYS

続いてはGASBOYS。block.fmのインタビューでもその名が登場したほど、スケボーキングの黎明期に非常に大きな影響を及ぼしたレジェンドが渋谷に顕現した。BEASTIE BOYS来日公演のフロントアクトを務めたこともあるGASBOYSの名前は当然知っていながらも、それはドラゴンとか伝説の生物を図鑑で眺めていたようなもの。ライブを見るのはもちろん初めてだ。

これ、当時からやっていたの!?というハードコアなギターサウンドとオルタナティブなビートをミックスし、スチャダラパーや真心ブラザーズのリミックスを手がけ、ゴスペラーズや三浦大知さんのサポートなどでも活躍するDJ バリK~んさんがスクラッチを鋭く刻む。まさにミクスチャーなトラックの上を小気味よい2MCのラップが走っていく。楽曲がめまぐるしく展開しつつその様は今聴いても新鮮で、確かに早すぎたミクスチャーバンドと言われる所以も納得である。


合間のMCでは上杉さんが、楽曲の背景についてぶっちゃけて話してくれる。それぞれの関係性やバックストーリーにカルチャーを感じ、当時の東京を今のまま体感したらもっと面白いんだろうなあ、と妄想が膨らむ。

GASBOYSは続くスケボーキングのステージにも登場しSHUNさんとの兄弟共演も実現。スケボーキングはそもそもGAS BOYSのカバーバンドとしてスタートした背景があり、初めてカバーした「公衆ベンジョ。Meets Cocobat」(1992)を披露した。GAS BOYSについてはatmosのブログ「 atmos University 」でも今井タカシさん本人が貴重な資料とともに語っているので、ぜひチェックしてほしい。(MADFOOT!めちゃくちゃ履いてました。当時、地方で手に入れるの大変でしたけど)。

GAS BOYS+SBK


歴戦のチームメイトであるSHUYAさんが直近で脱退してから、ベースのMASHさん、SHIGEOさん、SHUNさんの3人体制での初ライブ(おそらく)となるスケボーキング。「THE NEW ALBUM」からのネオスペーシー•オーセンティック・ヒップホップを展開しつつ、SHUYAさんにオマージュを捧げる「YOU ARE GOD」、「いつかどこか」をパフォーマンス。個人的にはこれを生で聴けただけでも万歳三唱である。

左からSHIGEO•MASH•SHUN

合間のトークも身内なノリで楽しく、SHIGEOさんのやんちゃをSHUNさんが嗜め、MASHさんが見守る。そんなスケボーキングの魅力が詰まったステージングだった。子供のようにステージでふざけていたのに楽曲になるとバシッと決める。そのギャップがたまらなくかっこいい。

サポートメンバーとしてSHIGEOさんの実弟のレイモンドさん(奥)も参加。moldやThe SAMOSでも兄弟で活動しているだけで勝手知ったる心強いメンバーだ。

「MINORITY REPORT」というタイトルはおそらく映画から来ていると思うのだけれど、身内のノリ、ローカルな世界観、当時からのつながり、今を生きる若者たちにとなっては、異世界の話しのようにも聞こえる、それらがリアルな質感でパッケージされたイベントの様相は「MIN
ORITY REPORT」と呼ぶにふさわしい。

喫煙所では普通にSHUNさんが仲間たちとタバコをふかし、山田マンさんが当時、雑誌のカバー撮影で、甲冑を着た話をしていたり(思わず立ち聞きしてしまった)。クラブやフェスに慣れてしまったが、そんな光景もライブハウスらしく、ライブで見るバンドサウンドの根源的な楽しさを思い出させてくれたような気がする。

スケボーキングのセンスの良さは健在、いや、ますますパワーアップしているので、今まさに目撃してほしいし、2000年代、憧れを抱いてきた人たちによる、この自主企画は、これからも懐かしさと新鮮さを伴ったリアルY2Kなイベントとしてさらに盛り上がっていってほしいなと思う(今回の目玉、GAS BOYSは90'sが活動の中心だけれど)。

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