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迷惑

私は「迷惑」という考え方になかなか馴染めない。英訳をしようとしてみるとわかるのだが、とても曖昧で規定しがたいものなのだ。まあ、迷惑を受けるのもかけるのもいい気のしないものだ、という社会であることがプラスになることもあるかもしれない、と全く思わないではない。けれども「他人さまに迷惑をかけないように」という呪縛のために正当な主張やちょっとしたお願いもできないことが多く、周囲の力を借りたりアピールしたりしていれば追い込まれないですんだのに、という場合も少なくない気がする。

そこでふと、祖母の話を思い出した。空襲で焼け出された祖母の一家を、知り合いの人が住まわせてくれて、やがてより近しい親戚の人たちが、すまないといって一家をひきとった、というストーリーだが、そのときに、まず住まわせてくれた人たちがみじんも迷惑そうな様子をみせなかった、と祖母は深く感謝していた。

そこで気がついた。たぶん「迷惑をかけるな」と、「迷惑そうな顔をするな」はセットになっていたのだと。けれども、前者がより大きな比重をもって教順化されるようになったのに比して、後者は建前や表面的な儀礼に過ぎなくなってきたので、私には納得のゆかないものになっているのではないかと。

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