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日記つづいたことない

 人生で10回くらい、日記をつける人間になるぞ、と宣言したことがある。そして、長くても数か月、はやければ一日で、その宣言を裏切ってしまう。面倒くさくて。はやく寝たくて。
 このnoteにも書いていたことがあるけれど、一日一記事がだんだん週に一記事になり、月に一記事になり、もはや日記じゃなく月記って感じになってきてもはやそれはただの近況報告なのよ、となりフェードアウトした。ざんねん。読書記録とかもちゃんと書く人間になりたくて分厚めのメモ帳買ったのに、三冊くらい記録してやめてしまった。ざんねん。紙のスケジュール帳に丁寧に予定を書き込む人間になろうと思って毎年スケジュール帳を買うのに、二月のおわりごろにはスマホのカレンダーアプリに戻っている。ざんねん。

 大学の友人たちと話していたとき、部屋の片づけできる派とできない派にぱっくり意見が割れた。
 前者の主張:部屋が片付いていないと気持ちがわるい、出したものをもとの位置に戻すだけなのだからなにも難しくない
 後者の主張:べつに散らかっていてもなんとも思わない、どうせまた出すのだからいちいち戻すの面倒くさい、どうせ新しいものを買ったら同じ場所にはおけなくなるのだから面倒くさい、自分の寝るスペースさえあれば問題ないのだから面倒くさい
 両者の意見はまったく相容れなく、ちょっとだけ仲がわるくなった結果、人間性がぜんぜんちがうのだ、という結論に落ち着いた。むろんわたしは後者。断然後者。
 そして、人間性のちがいがあらわれるのは当然片づけ面だけでなく、生活のすべてだ。前者の生活を聞けば、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きて、同じルーティーンにのっとって一日を過ごしているらしい。後者のわたしとは、一日の使い方があまりにもちがう。
 わたしは眠くなったら寝て、予定がない限り起きたいときに起きて、ぐちゃぐちゃの自室を横目にだらだら本を読んだりパソコンをぱちぱちしたりSNSを徘徊したりぬいぐるみと遊んだりしているうちに時間が経って眠くなって寝ている。一日の密度に、差がありすぎる。ひどい!(ひどい?)

 前者になりたいのですが……、と思う。前者人間はきっと、書くと決めたら日記とかもちゃんとつづくタイプなんだろう。毎日やるべきことをきっちりとこなし、こなしてからでないと安心して眠れないタイプなんだろう。

 日記つづかない人間とはいったいなにがちがうのかと考えて、前者の感情の軸には不安と安心のシーソーがあり、後者の感情の軸には面倒と楽のシーソーがあるのではないかしら、と思い至った。前者は安心して眠るために一日をきっちり過ごし、後者は楽に好きに眠るために一日をやり過ごしているのではないかしら。
 そしてこのまま、楽か面倒か、を基準に生きていたらわたしはただどんどん楽なほうへ、気持ちのいいほうへ流されていって無為に時間やお金を失ってそのまま死んでしまうんじゃないかしら。と末恐ろしさに気が遠くなりながら五分後にはまたけっきょくスマホとかひらいてしまっていてだめ。

 自制心のある人間にならなくちゃ。それはいつでも楽なほうへ飛び込んでしまいそうになる自分のリードを、常につよく握っておくこと。生まれつき前者のひとたちが当たり前のようにセーブしているのよりきっと、もっとつよい力で握っておかなくちゃいけない。スマホさわりすぎない、ほしいものなんでも買っちゃわない、複数の図書館で本借りすぎない、部屋の片づけする、もったいぶらずにさっさと寝る、姿勢よく座る、メンヘラしない、LINEとかメールすぐ返す。
 ただ、ふだんはしっかりと握っておくと同時に、手放すべきときにはふっと手放せるくらいの自由さも失わずにいたい。

 そうして自分をコントロールすることで、自分に厳しく他人に優しい人間になれやしないだろうか。面倒くささが勝って手を伸ばせなかったことは、何度でもある。

 毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝るところから始めようと思います。うちの朝ごはんの時間的に、七時に起きて、十二時には眠る。あと短くていいからこんどこそ日記をつづけたいです。
 でも三月も終わりがけで中途半端な時期だし、あー四月に入ってからにしようかなあ。などと言っていると四月になるころには面倒くさくなっているので、やっぱり今日からやろうかな。自分だけの日記だと本当に三日で終わってしまうので、たぶんこのnoteで。
 最終的にいつか文フリに出す冊子くらいの文章になったら万々歳じゃない? そこまでいけなくても、毎日の自分を記録しておくのはわるくないことだと思うのだ。証拠に、これまでに何度も始めてはすぐにやめてしまってきた切れ切れの日記を、わたしはいまでも時折読み返す。

 日記とかつづいたことない人間が、人生で何度目かの日記をはじめる。はじめるのはたぶん得意だ。何度も終わらせてきたということは、何度もはじめてきたということなので。

 


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