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【ルネサンスのど真ん中。みんな大好きボッティチェッリ】画家の生涯からウフィツィ美術館で大人気「プリマヴェーラ/春」「ヴィーナスの誕生」を読み解いていきます。

こんにちはとむです。

今日はボッティチェッリを紹介します。

ボッティチェッリは、まさにルネサンスの代名詞と言える画家です。時の権力者にも寵愛されて、描く絵画も華やかで優美です。そして、誰もが一度は目にしたことのある「ヴィーナスの誕生」や「プリマヴェーラ/春」を描いた画家です。
今回はそんなボッティチェッリの魅力と絵画を紹介していきたいと思います。

ポイントは3つです
1つ目は「ボッティチェッリってどんな人? 画家の生涯」
2つ目は「プリマヴェーラ/春を読み解く」
3つ目は「ヴィーナスの誕生を読み解く」です。

そして最後におまけです「ボッティチェッリって天才?それともヘタウマ?」について話します。

1つ目は「ボッティチェッリってどんな人? 画家の生涯」です。

ボッティチェッリは幼い頃は非常に落ち着きのない子だったと言われています。
見かねた父親は知り合いの金細工職人のもとに奉公に出します。そこでボッティチェッリはデッサンの才を発揮します。
父親はボッティチェッリが16歳頃にフィリッポ・リッピという画家のもとに連れていきます。
フィリッポ・リッピもルネサンスの主要な画家の一人で、美しい聖母子像が有名です。
ボッティチェッリはフィリッポ・リッピのところで才能を開花させます。
そして、23歳の頃にヴェロッキオの工房に共同制作者として出入りするようになります。
ヴェロッキオというのはレオナルド・ダ・ヴィンチの師匠として有名です。この時にボッティチェッリはダ・ヴィンチと出会っていたと考えられています。
そして、26才ごろに自身の工房を構えることになり、美徳の擬人像「剛毅」を制作します。
さらに33歳頃には、このあと紹介する「プリマヴェーラ/春」を制作します。
37歳のころにバチカンに呼ばれて、システィーナ礼拝堂の教皇の肖像や「キリストの試練」「モーセの試練」「反逆者の懲罰」などを描きます。
当時バチカンで仕事をするというのは、画家の最高峰に彼がいたことを意味します。

ちなみにシスティーナ礼拝堂といえば、ミケランジェロの「最後の審判」や天井画の「創世記」が有名ですが、ミケランジェロはもう少し後の時代の人なので、この時には「最後の審判」などは描かれていません。

そして、大役を果たしたボッティチェッリはフィレンツェに戻って「ヴィーナスの誕生」を制作します。
それから、ボッティチェッリは順風満帆な画家人生を送っていたのですが、1492年、ボッティチェッリが48歳頃にロレンツォ・デ・メディチが死んでしまいます。
ロレンツォは莫大な経済基盤をもってフィレンツェを支配したメディチ家の当主でした。豪華王と呼ばれて芸術家たちを支援した人物でした。
この頃のフィレンツェでは、メディチ家を中心とする過美で飽飾な風潮に反発する勢力がありました。ドミニコ修道会のサヴォナローラです。
彼は、メディチ家による贅沢な暮らしに対して「このままでは天罰が下る」と警鐘を鳴らしていました。そして、ロレンツォが死んだ翌年、フランスのシャルル8世がフィレンツェに入城します。ロレンツォの息子ピエロは、あっさりと入城を許したことで弾劾されて、フィレンツェを追放されます。
この時にシャルル8世と様々な調整をしたのがサヴォナローラと言われています。
このことでサヴォナローラ人気は一気に高まります。そして、清貧を美徳とするドメニコ会の教えを広めて神権政治を開始します。
この時に槍玉に挙げられたのがボッティチェッリでした。
メディチ家からの依頼で美術品をたくさん作っていたからです。
ボッティチェッリの絵はこの頃から変わっていきます。
かつての優美で華やかな画風はなりをひそめてしまいます。
この頃に描いたのは「アペレスの誹謗」です。以前の柔らかさや甘美な表現はありません。サヴォナローラの思想的影響をもろに食らった作品と言えるでしょう。

これ以降の作品は、暗く陰鬱なものが多く、我々が見たいボッティチェッリとは言えないのではないでしょうか。

ではいよいよ2つ目です「プリマヴェーラ/春」を読み解く。行きたいと思います。
この作品はフィレンツェのウフィツィ美術館にあります。教科書などで見たことがあるんじゃないでしょうか。
たくさんの人物が描かれています。
人物と言いましたが、ここに描かれているのは、ギリシャ・ローマ神話の神々です。
キリスト教の支配するイタリアでなぜギリシャ・ローマ神話の神々が描かれるのか。
実はこれが「ルネサンス的」ということなのです。
そもそもルネサンスとは「再生・復興」という意味があります。では何を再生・復興するのか、これは中世以前の「ギリシア・ローマの文化」です。
キリスト教によって絵画は形式化されます。しかし、ジョットなどの先達によって絵画は新しいステージに足を踏み入れます。その時に手本としたのが「ギリシア・ローマの文化」だったのです。この時代には優れた人体表現をした彫刻などがありました。ギリシア彫刻やローマ彫刻です。その時代の文芸を復興させようというのがルネサンスですから、ギリシャや、ローマ神話の神々を描くことはまさに「ルネサンス」ど真ん中のテーマと言えるのです。
では、作品を見ていきましょう。
まず、この作品のテーマは「愛」です。
中世の世界では考えられないほどの人間的なテーマですね。
中心にいるのが「愛と美の女神ヴィーナスです」このことからも「愛」がテーマだということが読み取れます。

ちなみにヴィーナスという呼称はローマ神話の呼称です。ギリシア神話ではアフロディテと言います。
さて、画面右側から見ていきましょう。
まず、青い体の男の神。この神は西風の神ゼフィロスです。
西風は暖かい風を運んできます。頬を膨らませて風を送り込んでいます。

そして、ゼフィロスが、抱きつこうとしているのクロリスです。
嫌がっているようにも見えますが、違います。この二人は結婚します。
クロリスにゼフィロスが触れたことによってクロリスの口から花が溢れ出します。
その結果、何が起こったでしょうか

クロリスが花の女神フローラに変身するのです。
右から3人目の女神はクロリスが変身したフローラの姿です。

つまり、西風によって暖かい風がもたらされて、花が咲き誇るというまさに春の現象を表しています。

さて、ヴィーナスを挟んで反対側にいきましょう。
三人の女神がいます。
彼女たちは三美神と言われていて「愛欲」「純潔」「愛」を表しています。
この三人の中に相容れないものが存在します。
「愛欲」と「純潔」です。
この二人を「愛」がとりなすという構図なのです。
そして、もう一つ「純潔」がこの場にいると、画面を愛で満たせなくなります。
そこでボッティチェッリは仕掛けを施します。
画面の上にキューピットを飛ばして、愛の矢で純潔を撃ち抜こうとしているのです。
しかし、さらにもう一捻り。キューピットは目隠しをしていることで、だれに当たるかわからない不安定さを演出しています。

そして、一番左の男はヘルメスです。
ヘルメスは杖を使って冬の冷たい暗雲を払い除けています。

ここまで聞くと気づくかもしれません。この絵は春です。画面の外、左側には冬があって、右側には夏があるという構図なのです。
そして、「愛の芽吹く春」がこの作品だということです。

この絵は結婚のお祝いに描かれたといわれています。

3つ目「ヴィーナスの誕生を読み解く」です。

ローマ神話に登場するヴィーナスは、さきほども言ったとおり、愛と美の女神です。
そもそもヴィーナスはどのように誕生したのでしょうか。
ヴィーナスは天空神ウラノスの男根が息子であるクロノスに切り落とされて、海に落ちてその精液と泡から生まれたと言われています。ではどうしてそんな一大事が起きたのか。
ウラノスと妻ガイアの間にはクロノスという息子がいました。ガイアはさらに2体の怪物を産み落とします。それがキュクロプスと、巨人ヘカトンケイルでした。怪物が生まれたことが気に入らなかったウラノスは2体をガイアの胎内に押し戻してしまいます。そんな事ができるんですね。
それに怒ったガイアと息子であるクロノスが共謀して、魔法の金属アマダスでできた鎌でウラノスの男根を切り落としたのでした。

こうしてビーナスが生まれます。
ヴィーナスはホタテの貝殻に乗って西風の神ゼフィロスとクロリスに導かれながら陸を目指します。そして今まさにキュプロス島に上陸しようとしているところがこの場面です。

陸では時間の女神ホーラーがヴィーナスに服を着せようとしています。このことのよって、ヴィーナスの時間が動き始めます。時間のない神の世界から時間が存在する人間の世界にヴィーナスが降り立ったのです。

よく、裸のヴィーナスのことを「天上のヴィーナス」着衣のヴィーナスを「俗世のヴィーナス」と言います。それはつまりこの出来事に起因するわけです。

最後におまけです「ボッティチェッリって天才?それともヘタウマ?」

ボッティチェリの絵を見ていると人物のプロポーションがどこかおかしいともいませんか?
首は少し長いような気がしますし、頭もちょっとずれてついているように見えませんか?肩は妙になで肩だし、手も少し長いように思えます。
マザッチョの正しい人体造形からは少し時代が逆行しているようにも思えます。
しかし、どうでしょうか?もしこれが完璧で正確なプロポーションだとしたら。果たしてここまで魅力的な絵になっていたでしょうか?
ボッティチェリには天性の感覚があって、プロポーションの狂いさえも魅力に変えてしまう抜群のバランス感覚があったのだと思います。
エコール・ド・パリの画家モディリアーニはこういったボッティチェリのプロポーションを参考に多くの人物画を残しています。
現代の画家にまで影響を与えたボッティチェリはやはり天才と言えるのではないでしょうか?

では今日のおさらいです。

1つ目は「ボッティチェッリってどんな人? 画家の生涯」

2つ目は「プリマヴェーラ/春を読み解く」
絵のテーマは「愛」でした。

3つ目は「ヴィーナスの誕生を読み解く」
ヴィーナス誕生秘話、楽しんでいただけたでしょうか。

以上ボッティチェリでした。

ちなみにボッティチェリというのはあだ名です。「小さな樽」という意味だそうです。
ボッティチェリにはお兄さんがいて彼が「樽」と呼ばれていて
その弟だから「小さな樽」だそうです。
これはボッティチェリの体型に由来するといわれています。
昔の人ってひどいあだ名を付けますね。

いかがでしたでしょうか?
最後までご視聴ありがとうございました。

それでは、アートで豊かな人生を。とむでした。

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さようなら。

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