青春の終わり--理想と欺瞞②

 今回は題材にする三作品の設定の確認とテーマにする点を明確にする。

・『生徒会の一存』--みんなを幸せにしたい

 タイトルにある通り、生徒会が物語の舞台だ。この作品には日常を議事録としてまとめたものを出版するというメタな設定がある。パロディが多く、メタ表現が多い点が特徴で、アニメ第一話で「メディアの違いを理解せよ」というセリフからメタな世界観であることに自覚的なシリーズであることをうかがい知ることができる。

 さて、本シリーズの設定について確認する。舞台となる生徒会は5人のメンバーがいる。生徒会役員は人気投票によって選抜される制度のため、必然的に(?)美少女が集まることになる。しかし、それだけでは実務に支障がでるため、成績優良枠がある。主人公の杉崎鍵もその枠を使って役員となった。

 彼は中学時代の恋愛にまつわるトラウマによって腐ってしまい、高校1年生時は成績も良くなかった。しかし、後の生徒会役員たちからの何気ない一言や優しさをもらい、ハーレムもののギャルゲーの主人公のように全員を幸せにできる人物を目指そうとする。

 どこか軽薄に感じるかもしれないが、みんなを幸せにするという選択を、彼が真剣に求めている点に、他の2作品と差があると感じる。

・『僕は友達が少ない』--リア充と残念

 目付きが悪いことと親譲りの金色混じりの髪によって不良として見られ、友だちがなかなかできない羽瀬川小鷹が、クラスメイト・三日月夜空に連れられて、隣人部という友だちを作るための部活を始めることから物語は始まる。

 様々な目的をもって7人のメンバーがその場所に集まる。リア充を忌避しながら憧れる。とてつもない優秀さがありながらコミュニケーションで失敗してしまう彼らの残念な日常は、時にドン引きするが楽しげだ。

 やがて、男女が同じグループにいるからには恋愛感情が芽生える。メンバー同士も反目しながらも友だちと言ってもよい関係に見えてくる。物語の後半には生徒会メンバーも4人加わる。リア充に見えている人と関わることで、実は彼女らにも残念な部分があることが判明し、隣人部のメンバーも変わろうとする。

 そんな中、小鷹はヒロインたちの重要なセリフを聞こえなかったふりをすることで、生ぬるくも居心地の良い、ありのままの自分でいられる場所を維持をしようとする。

 変わろうとするか、それを拒むか。ヒロインたちに引っ張られながら、彼は選ばないことを選ぼうとするが…。

・『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』--本物を求めて

 青春を謳歌することに欺瞞を感じ、クラスで孤立している比企谷八幡が、国語教師・平塚静によって奉仕部という部活動に参加させられる。そこには成績優秀な雪ノ下雪乃がおり、一緒にお悩み相談のような活動をすることになる。

 やがて、クラスメイトでトップカーストに属しつつ、自己主張が苦手な由比ヶ浜結衣が入部し、三人で活動を続けていくことになる。

 正論を武器に何でも自分でやってしまう雪乃と屁理屈と雑務処理力を発揮する八幡が、それぞれに解決策を提示する。多くの問題は八幡を犠牲にすることで後味悪く解決する。

 友情とも愛情とも言い難い想いが渦巻く奉仕部で、彼のその行為は否定をされるようになる。どんどんギクシャクとしていく中で、その関係性を維持しようとするのは困難だ。妥協をして偽物になるのではなく、本物の関係性でありたいという願い。

 最終的なヒロインとの関係性も一言で言い表せるものではないが、ヒロインの中から一人を選んだという点が他の2作品との差だろうか。

・終わりに

 想像していたよりもまとまらなかった。それにしても3作品の出版レーベルが違うのが個人的には面白く感じている。他レーベル、例えば電撃文庫で採り上げるとするなら、どんな作品になるだろうか。

 明日は理想と欺瞞という点について考えたい。

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