囲碁を始めようーーうろ覚え習得記

 私は小学6年生のころ、足を怪我し野球クラブを休部した。真剣に取り組んでいたことがなくなり、身体を動かせないストレスも重なった結果、精神的に不安定な状況に陥った。

 ある日、息抜きに連れて行かれたショッピングモールのおもちゃ屋で小さな囲碁盤を見つけた。漆塗り風プラスチック製の19路盤の魅力に取りつかれ、どうしても欲しくなった。

 お小遣いを貰っていなかった私は両親にねだった。「ルールを覚えたらね」と断られたことが私に火をつけた。

 まず、地区センターでやっている子供囲碁教室を見学することにした。何もルールを知らない私が教えてもらったのは「石取りゲーム」だった。

 初歩の初歩、相手の石を囲うと取ることができる。相手より先に10個を取る。囲碁未満の遊びではあるが、単純な勝負であるため、のめり込むことができた。

 シチョウなどの技を覚え、その次には碁会所で行われている子ども囲碁教室に参加するようになった。そこでは得点で級位と段位を表していた。一番低い級位をもらい、一級差ごとにハンデが追加される。そこでは基本的な囲った陣地が多いほうが価値というルールを教えてもらったら即実戦だった。

 やりながら覚えるにしても、レベル差がない場合、囲碁の形にならない。そこで先生(アマ4段ほど)との対局も含め、一日に4,5局を打った。上級者と打つことで、囲碁の流れ、一極集中ではなく大局的に盤面を見ることを体感的に学ぶことができた。

 次第に基礎ルール以上の知識が必要になる。定石や布石、死活だ。序盤に重要になる定石と布石は、直近数年内の棋譜を繰り返し並べることで学ぶことができる。特に新しい棋譜ほど流行の型を使っている場合が多く、実際の対局の際に役立つ。

 棋譜並べは囲碁の流れを知ることに非常に役立つ。特に好きな棋士の棋譜を繰り返し並べることで、自分の型(クセ)を身につけることができる。私の場合は本因坊秀策と当時初タイトルを獲得したばかりの山下敬吾をよく並べていた。

 次に死活を知るために、「ひと目」でわかるような簡単な詰碁集を繰り返し読んだ。何に関してもできないことほど苦痛なことはないだろう。多くても3手読みの問題であれば、初級者でもコツさえ掴めばスラスラとすすめることができる。

 ここまでくれば、後は実戦を繰り返していくことで、ある程度までは伸びると思われる。

 まとめると、石取りゲームから始まり、基礎ルールと実戦、棋譜並べ、ひと目の詰碁、そして繰り返し実戦する。概念から学ぶという方法もあるかもしれないが、頭だけで理解するのではなく、身体で覚えることも必要だと考えている。なぜなら囲碁は頭脳のスポーツなのだから。

(ちなみに上記の囲碁盤を買ってもらうことはできなかった)

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