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6秒にかける…(物理)

昨日は私の所属する楽団の「フィルハーモニック・ウインズ 大阪(オオサカン)」の練習日でした。

6月に行われる定期演奏会の練習ということで集まったのですが、今日はいつもの現場よりちょっとばかし大荷物。

その理由がこれです。


こちらはミュートといって、楽器の音が出る部分を塞ぐようにしてかぽっとはめることで音量が落ち、音色も変わるといった効果を付与できるアイテムです。

とんでもなく重そうな鈍器にも見えるかもしれませんが(言われたことある)、中身は空洞なので見た目ほどの重さはありませんし、取り扱いに気をつけないと簡単に凹みがついてしまったりする案外繊細な代物です。

このミュートは知らなくても、ミュートという言葉は馴染み深いのではないでしょうか。一般的には音を消す(消音)という意味で使われることが多いかと思います。通話中にマイクをミュートにしたり、テレビの音量を0にするミュートボタンがあったり。

しかしながら私の演奏するユーフォニアムは超アナログな楽器。ボタンをポチッと押してモードを切り替えるなんてことはできないので、物理的に蓋をします。そうすることによって音量はぐっと抑えられるわけです。

ただし金管楽器に使われるミュートというのは先ほどもちらっと触れたように音量を落とすことだけが仕事ではありません。
むしろもう一つの仕事「音色を変える」、この効果がなければわざわざ曲中でミュートなんて使わないかもしれません…。

せっかくの機会ですので、ミュートを使った音を録ってみました。
noteのためにYouTubeどんどん活用していきましょう。通常の音と比較できるようにミュートなしver. と吹き比べています。

少しざらっとしたような音色に変わったのが分かるでしょうか。これかミュートのお仕事です。

さて、なぜこんなにもミュートについて力説しているかと言いますと、ミュートお披露目の機会が6月15日に控えているからです。
それがこちら。

この日演奏予定のジェイムズ・バーンズ作曲「交響曲第2番」という曲でミュートの出番があるのです。その登場時間なんと約6秒。

いえ、決してこんなに大きなものをたった6秒のためだけに持っていってるんですよなんてことが言いたいのではなく…このサイズのものが入る袋もなくて大昔の福袋のショッパーに入れて運んでるとかどうでもよくて…(すみませんほんと)

ジェイムズ・バーンズさんはじめミュートを曲中で使おう!となるのは、その6秒やそこらの一瞬の音にそれだけのこだわりを持って曲を書かれているということですよね。

音量を落とせばいいだけなら吹き込む息の量を減らして弱く吹けばいいし、2人で吹いているなら1人で吹けばいい話です、安直に考えるならば(音を重ねる旨味とかそういう話はおいておいて)。

そこを敢えてミュートを使って吹いてくれ!という作曲者からの強い意志が譜面に書き記されているのです。
単に音量を落とせばいいのではなくて、だからといって音色の違う他の楽器にこのフレーズを吹いてくれと回すわけでもなくて、他でもないユーフォにミュートをつけてこのフレーズを吹いてくれ!と。

持ち運びの手間が〜なんて言ってられません。その情熱を演奏で再現しようというものです。

(ただしユーフォニアムのミュートなんてのは登場頻度が高くない上に気軽に買える金額でもないので、中高生など手元にミュートがなくても気軽に演奏できるようにと、ミュートを使わないよう工夫して楽譜を書いてくださる作・編曲者様もたくさんいらっしゃいますし、そのありがたみも感じております…ありがとうございます。)

今日のリハーサルではもちろんこの曲にも取り組みましたし、その音が書かれてる意味に向き合う時間をしっかりと過ごしました。

今回はミュートを取り上げてお話ししましたが、それに限らず楽譜上に意味のない音なんてないわけで。すごいですよね、指定されたことを忠実に守って演奏できればその音楽が成り立つように書かれているんです、楽譜って。

吹奏楽に限らずリハーサルなどでこんな話題がよく上がります。
「なんか音源聴いて吹いてる?」
これはどういうことかというと、誰かが演奏した音源が耳に馴染みすぎて、聴いて覚えたものが自分の演奏にまで反映されていないか、という話です。良くも悪くも。

今はサブスクやYouTubeでいろんな音楽と出会える時代。
それって素晴らしいことだと思います。
お金と時間をかけて足を運ばないと聴けなかったものが手元のスマホ一つで聴けてしまうのですから…。

そんな文明の利器はどんどん活用して積極的に新しいエッセンスを取り入れていけばいいとは思うのですが、演奏するときはひとつ注意を払う必要が出てきます。

それが「楽譜を無視していないか」ということ。
耳に馴染んだ音に頼りすぎると、楽譜にせっかく書き記されている指示を見逃してしまうことがあります。

楽譜は作曲者からのメッセージ。乱暴な言い方をすると、まずは書いてあることを吹けばいいだけの話なんです(それがとっても難しい!)。

まずちゃんと楽譜に書かれていることを汲み取るのは大前提として、そこから今まで聴いてきた音源も含め自分の知識や経験を総動員させてどんな演奏にしようかと舵を切る。

絶対にやらないといけないことだけど、それが難しいことでもあるので。こうしてここに残しておくことで自戒にもなりますね。ちゃんと楽譜を読もう!

ということで、6月15日は定期演奏会に出演します。

チケットは私個人の各SNS(DM等)でも受け付けておりますので、どなたでもお気軽にメッセージください(フォロワーさんでなくとも◎受信設定できているはずです!)。
「6/15行くよ〜」てな感じで大丈夫です。

わずか数秒間を取り上げただけでもこんなにお話しできるんですから、これからもぼちぼち「なんか面白そうだし聴きにいってみようかな…」と思っていただけるかもしれないnoteを書けたらな〜と思っています。

6月15日、いずみホールでお会いできる方には「あのでっかいミュートいつ使うのかな…」とソワソワしていただいて、約6秒の出番が終われば心の中でミュートたちに盛大な拍手を送っていただけますと私が喜びます。

それではまた次の記事で!

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