Surface Pro 7 対 iPad Pro、どっちが強い?

バカっぽいタイトルで恐縮です。筆者は現在、Surfce Pro 7(2019年10月発売)と、11インチiPad Pro (第1世代)(2018年11月発売)という2つのタブレット系マシンを使っています。この2機種を使った体験から、2-in-1モバイルとしての両者の特徴と購入時のポイントを考えてみたいと思います。

Surface ProとiPad Pro、似て非なる存在

先日、「ペン付き2-in-1こそモバイルの理想である」なんて書きました。ノートPCとしてキーボードでバリバリ入力し、タッチスクリーンを備えたタブレットとして直感的かつ気軽にどこでも使え、ペンを使うことでクリエイティブワークにも活用できる……そんなカッチョいいワークスタイルやライフスタイルを実現するアイテムとして、2-in-1機は非常にワクワクさせてくれる存在です。

2-in-1には、コンバーチブル、デタッチャブル、タブレット+キーボードという大きくわけて3つの形態にわかれますが、手軽さの点ではタブレット+キーボードがコンパクトかつオシャレな感じがして、人気がある分野だと思われます。この、タブレット+キーボードの2-in-1において、2大ブランドこそが、iPad ProとSurface Proでしょう。

ただ、普及度や認知度で行くとiPad ProのほうがSurface Proの数倍あるのではないかと思います。iPadが老若男女から幼児、さらには猫にまでに使われる(iPadのゲームで遊ぶ猫の動画が昔話題になりました)大メジャーなのに対し、Surfaceは、ちょっと自分のスタイルにこだわるアーリーアダプタ的な人がユーザーに多いのではないでしょうか。

この2機種は、本体がタブレットで、別売のキーボードを付ければノートPC的に使え、これまた別売のペンを使えばペン入力端末になる、という点では似ていますが、まったく別の文化圏の出自のものが、お互いに影響を与えながら進化した結果、よく似た形状に落ち着いたものだと思います。似た形状の海の生き物であるけど、実はまったく異なる魚類の鮫と哺乳類のイルカみたいなものかも。

iPad Proの原点はiPhoneです。2010年4月に発売された初代のiPadは、ソフト的にもハード的にもiPhoneを単に巨大にした代物でしたが、新しい形のデジタルガジェットとして、特に電子書籍の時代を切り拓く端末として熱狂的に歓迎されました。その後、ただの巨大なスマホであることが露呈しブームが冷め、しばらくは売上も伸び悩みましたが、ペンやキーボードも使えるクリエイティブなコンピューターと再定義されてから人気が定着。OSもiPhoneのiOSから別れてiPadOSとして独立し、ファイル管理やマルチウィンドウも可能なノートPC的に使えるマシンとなりました。

Surface Proの原点というか源流は、一般的なWindows PCでしょう。そもそもデスクトップマシンのためのOSだったWindowsが、UIやUXをMacOSに寄せることで大成功したWindows 7を経て、次にiOSやAndroidを意識したWindows 8に進化して沢山の「Windowsタブレット」が販売されました。「Microsoft Surface」は2012年10月にマイクロソフト自身によるWindowsタブレットとして誕生しました。当初は酷評された部分もありましたが、次第に完成度をあげ、3代目のSurface Pro 3とSurface 3でほぼ完成形となりました。

iPad Proの魅力は、iPhoneに始まるiOS機器のシンプルで安定した使い勝手にあり、Surface Proの魅力はWindowsの汎用性と自由度の高い拡張性にあると思います。

ノートPCとしてのSurface Pro VS iPad Pro

キーボードとタッチパッドを使って、文章を書いたり、スプレッドシートでデータ処理をしたりするなら、Surface ProのほうがiPad Proより遙かに安心かつ安定して使えます。Surface Proは100%純粋なWindowsマシンですから、WordやExcel、PowerPointも、ChromeやGoogle スプレッドシートも完全にすべての機能を使えます。すべてにおいて、本家本元なのです。

iPad ProにもWord、Excel、PowerPointも、Chromeもあります。しかしそれは、Windows用に作られた本家に対するサブセットであり、「一般的なことはできるけど、できないこともある」という常に注釈付きの環境でしかありません。例えば、Excelではマクロが実行できないだけでなく、条件付き書式やピボットテーブルも使えません。

また、キーボードによる日本語入力マシンとしても大きな差があります。Surface Proは、日本語入力ソフトウェアとして、Windows付属のMS-IMEだけでなく、Google 日本語入力やATOKなどから選んで、それらのキー設定を自分好みにカスタマイズして使用できます。著者は、ATOKをVJEのキー設定にして、さらに一部のキーをカスタマイズして使っています。

iPad Proではこれができません。iPad Proは外付けキーボードをサポートし、ATOKもインストールできますが、外付けキーボードではiPad OS純正の日本語入力ソフトウェアしか使えないのです。「物書きマシン」として使う場合も、iPad Proは限定的な使い方しかできないのです。

タブレットとしての Surface Pro vs iPad Pro

タブレットとして大事なことは何でしょうか。期待されるのはタッチパネルを使った気軽な Web のブラウジングや、動画や電子書籍の鑑賞をできることでしょう。撮った写真の整理やレタッチもタブレットモードだと使いやすいかもしれません。

このようにタブレットとして使う場合、Surface Proもそこそこ使えますが、やはりタブレットの本家である iPad Pro の方がより使いやすいです。その大きな理由は専用アプリが存在するかです。iPadは基本的にアプリの世界です。コンテンツ系のサービスもアプリ経由で使うようになっていますが、Surfaceの場合はコンテンツ系のサービスはWebブラウザでの利用が多くなります。

例えば  『dマガジン』で雑誌を読むとき、 iPad Proには専用のアプリが存在しますが、Surface Proの場合はWebブラウザ経由での利用です。アプリで使用する場合は、お気に入りのページをクリッピングして保存したり、各雑誌からある特定ジャンルの記事だけを横串で抽出して読むサービスも利用できます。一方、Webブラウザ版の d マガジンは、基本的に雑誌をデジタル化したものが読めるだけです。もちろんこれだけでも非常に便利なのですが。同様に、日経新聞も iPad Proは専用アプリがあって、新聞の紙面イメージで読むことができたりして、利用形態の幅が広いとは言えます。

SNSは、Twitter、Instagram、LINEのWindows用アプリが存在しますが、facebookはWebブラウザからの利用になります。

動画系のサービスもNetflixはWindows版のアプリがありますが、YouTube、Amazon プライム、Hulu、AbemaTVはWebブラウザ経由の利用になります。nasneで録画したテレビ番組を見る場合は、WindowsにはPC TV plusが、iPadにはTorne mobileがあります。PC TV plusのほうが高機能ですが、Torne mobileのほうが安定しており、安心して使えます。

ペン入力マシンとしてのSurface Pro VS iPad Pro

ペン入力マシンとしてもiPad Proのほうに軍配が上がります。Surface ProとiPad Proは、ともに4096段階の筆圧検知が可能な別売のペンを使用できます。その点では同等と思いますが、細かい点を比較するとiPad Proの方が完成度が高いと思えるのです。

ハードウェアの観点で比較すると、iPad Pro用の『Apple Pencil』は、本体に磁石でくっつけておくだけで充電できる利便性があります。基本的に電池切れの心配がないのです。それに対して、Surface Proの『Surface Pen』は電池式のため、使っていると突然電池切れを起こすことがあります。また使用するのが単6乾電池でどこにでも売っているわけではないと言うのも不安点です。

ペンの太さの点でもApple Pencilの方が細くて握りやすく、Surface Penはちょっと太いと感じます。

ソフトウェアで比較してもiPad Proの方が優秀です。どちらも複数のペン入力対応アプリがありますが、iPad Proの方が数が多く、両者で使える同じアプリでも、iPad Pro版の方が高機能なころがあります。例えば、無限大の用紙が使える「コンセプト(Concepts)」と言うデザインアプリの場合、iPad版には定規の機能がありますがWindows版(とAndroid版)にはありません。

逆にSurface ProはWindowsマシンなので、フルセットの機能を持つPhotoshopが使えたり、コミックやイラストを描くときの、定番ソフトウェアである『Clip Studio』が使える点では有利だと言えます。

画面の大きさと発熱の問題

ここまできて、じゃあ、筆者は文字を入力するときはSurface Proで、ペンを使っているときは、iPad Proを使っているのか? というと、実はSurface Proをペン入力マシンとしても、けっこう使っています。画面の大きさを比べると、Surface Proは12.3インチで、11インチiPad Proはその名のとおり11インチ。この1.3インチの差が意外と大きくて、Surface Proで画を描くほうがストレスが少ないと感じています。

一方で、Surface Proは発熱が大きくて、すぐに熱くなるという問題もあります。iPad Proは画を描いたくらいでは、ほとんど発熱しませんが、Surface Proは1時間も使っていると、だいぶ熱くなる。冬はいいけど、夏はちょっと辛いです。

Surface ProとiPad Proは得意分野が違う

ここまで見てきたように、Surface ProとiPad Proでは方向性がけっこう異なっています。もし、フルに仕事に使えるPCが欲しいなら、iPad Proはオススメしません。「iPadOSとMagic keyboradでiPadがパソコンになった」とは、まだまだ言い切れない状況です。仕事用PCが欲しいならSurface Proにしましょう。

いっぽう、手軽でかつ安定して使えるペン対応タブレットが欲しいなら、iPad Proのほうが良いです。Surface Proは「タブレットにもなるWindowsマシン」ではありますが、その利便性はやや限定的になります。

もし、どちらにしようか迷っているなら、まず「自分に一番必要なのは何か?」をきちんと見極めたほうが良いでしょう。












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