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第30回電撃小説大賞 一次選考を紐解く!

 以前からTwitterで予告あった通り、本日12:00、第30回電撃小説大賞 一次選考通過者が発表されました。

 今回、通算3回目となる電撃一次選考通過を決めたトモユキが、今年の一次選考を紐解いてみたいと思います。
 もちろんこれは僕の勝手な考察であって、当たるも八卦当たらぬも八卦の精神で、読んで頂けると幸いです。


第30回応募作品総数について

 今年はカクヨム経由での応募が解禁された事もあり、応募総数を大きく伸ばすかと思いきや、蓋を開けてみれば4,467作品(Web応募3,171 / カクヨム経由1,296)と例年並みでした。
 ではなぜ、そのような事が起きたのでしょうか?

過去5年の電撃小説大賞、応募総数と各選考通過作数

カクヨム経由の応募が少ないのはなぜか?

 カクヨムの電撃応募の要綱を確認してみると、
 〔長編〕12万字以上18万字以内で完結していること
 と書かれていて、これがネックになった可能性が高いです。

 Webの投稿長編小説は、つかみが全てです。一作品を完結まで読み切って評価を下す読者は少なく、いかに序盤でブックマークや☆を獲得できるかの勝負になります。10エピソードも更新すればその作品がランキング入りできるのかが分かり、ダメなら失敗と放置し、また新作を書きだす作者も珍しくありません。
 そんな中、12万文字以上で完結している物語は、元々少なかったんじゃないかと思います。
 また、人気が出てくれば続けたくなるのがWeb小説。人気作を完結してしまったら、せっかく掴んだ読者もどこかに行ってしまいます。そうなれば18万文字を超える未完結大長編になっても不思議ではありません。

Web応募作品数が少ないのはなぜか?

 冒頭書いた通り4,467作品の内訳は、Web応募が3,171、カクヨム経由が1,296となっていました。Web応募が例年より1,000作品ほど少ないです。
 これは単純に、カクヨムにアカウントを持っていた電撃大賞応募勢が、カクヨム経由で応募する事にしたからでしょう。
 例年、Webで投稿していた作品を電撃フォーマットのWordにコピペして体裁を整えていたのですから、投稿サイトから応募できるのは楽チンです。
 で、実際にその方法を取ったのが1,000作品程度だったとすると、カクヨム経由が解禁になって、普段電撃に応募していない作品が応募されたのは、300作品程度だったのかもしれません。

より狭き門となった一次選考

 今年は一次選考が大荒れでして、わずか190作品のみの通過でした。例年10%前後だった1次通過率が、今年は4%程度しかない異常事態です
 前回29回の2次選考通過率が6.2%程度ですので、例年の2次通過作品が、今年の1次通過と思っていいでしょう。
 ではなぜこのような大鉈が振るわれたのでしょうか?
 これはもう選考した編集部しか分からないですが、ここはひとつ小説家志望として、妄想全開で理由を考えていきましょう!

理由その① 編集部の人員減?

 電撃小説大賞では、1次選考通過以上から評価者2名の選評がもらえます。
 それはもちろん、編集部員2名以上が最初から最後まで作品を精読して書いているわけで、ここで作品数を絞れれば大幅な時間短縮に繋がります。
 一方、作者側も早く落選が分かれば、応募作を別の新人賞に持っていく事もできます。
 一次選考を絞った方が、双方メリットが高いと思ったのかもしれません。

 ちなみに、一次選考は編集部以外の下読みさんが判断されていると思われます。下読みさんは新人作家や、編集部と縁のある方が依頼されていると思われ、おそらく編集部から「今年は一次で絞るから厳しめで」という指示が出たんじゃないでしょうか。うっかり絞りすぎちまったぜ、なーんて事も?
 一昔前なら、小説賞の一次選考は「最低限、小説の体をなしている」とか「文法・作法がおかしくない」とかが評価基準でしたが、今はもう最初から「面白いかどうか」が問われているんだと思います。

理由その② 異世界、流行モノの衰退?

 今回の190作品のタイトルを眺めていると、今までバズワードだった「異世界転生・転移」「ざまぁ」「悪徳令嬢」「無双」が少ないです。
 電撃は「面白ければなんでもいい」をスローガンに掲げてますので、元々異世界系は少なかったですが、今年はそれがより顕著になった気がします。
 特に190作品の下から30作品程は、カクヨム経由で応募された作品と思われ、ここでも異世界系は数えるほど。
 もしかすると異世界他流行モノは、意図して落とされてる可能性も考えられるのではないでしょうか。

理由その③ 選考ステップの圧縮目標?

 実は前回第29回では、最終選考に残ったのは6作品で、そのまま6作品が受賞しました。例年10作品程度の最終選考の中から、6作品前後を選んでいたにも関わらず、です。
 これでは最終選考まで残れば全作品、何かしら受賞できるんじゃないかという前提を作りかねない。かといって、受賞する可能性が少ない作品を、最終選考員に読んでもらう時間も申し訳ない。

 だったら――現在の四次選考方式を、三次選考方式にしてしまえばいいのではないか⁉

 僕は以前から不思議に思っていました。電撃の2次選考、3次選考はなぜか同日、8月10日に発表になる事を。
 例年、1次選考通過の400作品が、2次で200作品、3次で80作品、みたいな感じで半分ずつ少なくなっていくんですが、これを同日に発表されるのです。おかしくないですか?
 だってどうせ落選するって分かってるなら、2次で落ちても3次で落ちても変わらない。もらえる選評の人数も、2次と3次では変わらないので。
 だったら3次→最終→受賞とするよりも、次回からは2次→最終→受賞とした方がよくない? と思ってもおかしくないわけです。
 そうなれば、1次から絞り込むだけ絞り込み、実績を作る事も大事になってくるかもしれません。ほーら、こんなにステップ分けても、あんまり減っていかないでしょう? だったら2次3次は一緒にしちゃいましょうよー。

 第30回、第31回は事前に告知を出しているので3次→最終→受賞というステップを踏むと思いますが、第32回くらいから、2次→最終→受賞形式にするかもしれませんね。
 そうすれば選考時間もスピーディになるし、最終残って落選の憂き目に合う作者も少なくて済む。選考委員の先生も、落選作品を読む必要がなくなるわけで、みんながハッピーになれる気がするのです。

終わりに

 ここまで第30回電撃小説大賞の一次選考について、私見を書いてみました。あくまで僕の個人的な意見とも、感想ともつかない話ですので、参考程度にして下さい。

 記事を書いてみて非常に興味深かったのが、異世界転生・転移系の終焉。
 10年続いたムーブメントも、そろそろ終わりの時代に差し掛かっているのかもしれません。
 今後はラブコメや青春セカイ系、ちょとファンタジー要素のある現代劇、東西問わず時代モノなんかが流行りの中心になっていくかもしれませんね。
 でも結局のところ「面白ければなんでもいい」
 ここに尽きると思います。

 今回僕は、新作1本と旧作改稿版1本書いて挑戦しましたが、新作の方が1次落ちで、旧作改稿版が1次通過しました。新作の方はまさに異世界転移系の物語で、それが古臭く思われてしまったのかもしれないと自己評価しています。
 電撃小説大賞は業界をリードする賞ですし、ここで受賞する事は相当難しいとは思いますが、チャレンジする価値のある賞だと思っています。

 自分なりに分析する事はとても大事です。その気づきを、次作に繋げる事ができるから。
 1次落ちても、最終落ちても、やる事は変わりません。
 それでも願わくば最終まで行ってもらいたいところですが、選考の間も新しい物語を書き続けて、どんどんレベルアップしていきたいと思います!


noteの #創作大賞2023、#ミステリー小説部門に下記で参加しています。
2万文字完結のミステリーになりますので、ご興味ありましたら是非お読み頂き、気に入ったらスキもらえると喜びます。


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