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川のほとりに立つ者は(著者:寺地はるな)

川のほとりに立つ者は
著者 寺地はるな
初版 2022年

カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。(出典:双葉社HP)
https://www.futabasha.co.jp/book/97845752457210000000

今回、最初にこの本を読み終えた時に、物語のかたちは見えませんでした。かたちが見えなかったことは、これまでも何度かあって。これまでは、そのままにしていましたが、今回はなぜ見える本と見えない本があるのかを考えてみたいと思いました。
これまで見えなかった本は、ストーリー展開が読めないことが多かったような気がします。ミステリー小説など、「この先どうなるんだろう」と先を知りたくてストーリーを追いかけるのに夢中になるような本です。たぶん、ストーリーを追いかけて、そちらに集中しすぎて読み進めると、その本の文章が醸し出す匂い?色?のようなものを感じ取りにくくなるのかもしれません。もしくは、本によって、文章の匂いが強かったり、弱かったりするのかもしれません。強い文章だと、ストーリー展開が読めないものでも物語のかたちが見えるのかもしれない。そこは、これまで意識したことが無いので、私自身にもまったく分かりません。
 今回、ストーリー展開を知ったうえで読めば、文章の匂いを感じ取れるんじゃないかという仮説を立てて、実験的に連続でもう一度、この本を読んでみることにしました。結論として、2回目に読んだ時には物語のかたちが見えました。文章の匂いが弱い本なのか、もしくは、私がストーリーに夢中になりすぎたのか。今後、別の本を読むなかで、また考えてみたいと思います。

□「物語のかたち」
正方形で少しだけ高さのあるかたち、それが複数に砕けた。色は新緑の色で、優しく柔らかい緑色をしている。

□「物語のかたち」ができるまで

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私が本を読みながら見ている「物語のかたち」は、読み終わった時にパッと現れるわけではありません。本を読んでいくなかで、かたちが現れてきて、読み進めるうちに、そのかたちは変わっていきます。「物語のかたち」として最初にご紹介しているのは、私が本を読み終わった時に見えているかたちです。
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上からポタリと1粒だけ水が落ちてきた。表面張力でぷっくりと膨れている。そのうち、もう1粒落ちてきて、2つの水滴が一部繋がってひょうたんのようなかたちになる。そのかたちの下から周囲に向かって墨汁のような薄い黒色が広がっていく。(7月23日の原田清瀬)
広がっていた薄い黒色がすっと消える。(7月24日の原田清瀬)
果物のミカンのような色鮮やかなオレンジ色に変わる。でも、すぐに色がすっと消える。(1月4日の松田圭太)
急にカクカクと固まり、表面は宝石をカットしたような角ばったかたちになる。(7月25日の原田清瀬)
ぶわーっと膨らんで、水が蒸発するように消えていった。(7月25日の原田清瀬)
真っ黒な丸い球体が現れる。すっと色が無くなり、溶けて水たまりのようになる。(7月23日の松田圭太)
水たまりのような形が、周囲から爪を立てるように盛り上がって中心に集まってくる。少し高さのある正方形で、色は新緑のような緑色。(7月30日の原田清瀬)
最後に、この形が複数に砕けた。(10月25日の原田清瀬と松本圭太)

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