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「月の立つ林で」

最近、時間や環境で本の好みが変化していると実感します。私の場合、映画や音楽はジャンルを広く見聞きしていますが、読書はテーマや著者、文体などの好みがその時々に変遷しているので面白いです。
3、4年前は吉本ばななさんや江國香織さん、原田マハさんなど女性作家さんの小説を多く読んでいました。しかし最近は男性作家さんの小説が多く、何か専門性を持つ主人公が大きな物事に挑むような胸が熱くなる本が好きです。
エヴェレスト南西壁を未踏ルートで登るとか、記者がネパールで起こった殺人事件の真相に迫るとか。

そこで最近読んでいる本とは異なるような本を読みたいと思い、そんな矢先に出会ったのが、書店のレジの横に平置きされていた、青山美智子さんの「月の立つ林で」です。

読み終えて、じーんと温かさが残る、人と人の繋がりや縁を感じさせる前向きな小説でした。
物語は5章からなり、それぞれ主人公が違います。ですが、5人ともポッドキャストの『ツキない話』を聞いている共通性があり、このポッドキャストが物語の鍵になります。
物語にAmazonミュージックやSpotifyという単語がでてきて今どきだなと思いつつ、身近さもありました。

月と地球
5章からなるこの小説で特に好きな章が、1章の誰かの朔と3章のお天道様です。
『ツキない話』のスピナーであるタケトリ・オキナの言葉が、人と人との繋がりを肯定してくれている感じがして好きです。
進学や就職で物理的に距離が離れることや、仲が良かったお世話になった人たちと少し疎遠になって連絡が少なくなることもあります。
寂しさや孤独を感じることもありますが、誕生日にお祝いの連絡をしたり、久しぶりに再会した時に変化に気づけたりと、離れて感じる繋がりがあったりします。今の自分と周りの人の距離を無理に縮めようとせず、ありのままでいられたらいいなと思いました。

少しずつ少しずつ離れていきながらも、そのときのお互いに一番合った状態で関わり続けてくれてるんだなあって、僕は思うわけです

p.18

竹の林
4章ウミガメに竹の話がでてきます。
竹は見えない地中で繋がっていて、一つの樹みたいなものらしい。
そんな竹はこの小説を表しているように感じました。章ごとに主人公は異なりますが、それぞれの登場人物が間接的に繋がりあっているのがこの本の特徴です。竹のように、直接見えなくても気づかぬうちに互いに影響しあっているところが面白いです。

長かった春休みが終わってしまいますが、本を読む時間を大切にしていきたいです。
古い時代や外国の作家の本も久しぶりに読むことができればいいなと思います。
お勧めがあれば是非教えてください。

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