おもちゃ箱 第45話
絵「え……」
黒「どういうことだ。他に動機のある人なんて……」
奏「……1人だけいる」
奏は拳を握った。
絵「誰なんですか?」
黒「勿体ぶってないで教えてくれよ」
奏「……俺、この顔の嶋野亜依子さんを見たことがある。ある人の家で」
黒「えっ!?」
絵「ど、どこで見たんですか?」
奏「……時東先生の家だ」
黒「……はっ?」
奏「秀平、俺と時東先生の家に行ったときのこと覚えてるか?」
黒「あぁ」
奏「その時、写真が飾ってあった。時東先生と2人で写ってた」
黒「でも、何で先生と?」
奏「先生だったんだ。嶋野さんと結婚していた男の人は。先生と離婚した後、直ぐに整形したんだ」
黒「先生が、この女と……」
絵「……あの、誰なんですか? その人。2人の知り合いみたいですけど」
奏「時東聖陽。俺たちが通ってる大学で心理学を教えてる先生さ。姉ちゃんもこの人を見てカウンセラーになったんだ」
絵「えっ!?」
奏「……とにかく、日下さんに連絡しないと」
奏は席を立つと部屋を出て、急いで秀明に連絡をした。
日『もしもし』
奏「あ、もしもし、奏です」
日『あぁ、奏君か。どうした?』
電話越しの秀明はどこか焦っているように奏は感じた。
奏「実は、事件の真犯人と思われる人物が分かったんです」
日『本当か!? 一体誰だ?』
奏「……時東聖陽。うちの大学の心理学教授です」
日『何!?』
奏「姉ちゃんもその人の授業を受けていました。その人の影響で、姉ちゃんカウンセラーになったんです」
日『……』
奏の言葉に、秀明は唇を噛んだ。
奏「日下さん、 どうかしたんですか?」
日『……実は、かなえと連絡が取れないんだ。職場にも自宅にもいない』
奏「えっ……」
日『携帯のGPSを調べたんだが、バッテリー自体を抜き取られてて、辿ることが出来ないんだ』
奏は頭を抱えた。
しばし考えた後、奏はあることに気付いた。
奏「日下さん、時東先生の自宅に向かってください!! 姉ちゃんもそこにいるはずです」
日『自宅? ……分かった。今すぐ向かう』
そう言って電話は切れた。
奏「……」
黒「奏、 どうかしたのか?」
奏「……姉ちゃんが時東先生に拐われたかもしれない」
黒「はぁ!?」
絵「えっ!?」
雪「!!」
奏「すいません。ありがとうございました!!」
奏は校長と甚平に礼を言うと、荷物を持って急いで部屋を出た。
黒「あっ!! おい、奏!!」
絵「先輩、待ってください!!」
雪「……」
秀平と絵里加は奏を追って部屋を出ていき、美琴は校長と甚平にお辞儀をすると、そそくさと部屋を出ていった。
校、権「……」
部屋には、お互いに顔を見合わせ呆然としている校長と甚平がいた。
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