2020年4月の記事一覧
女性専用病室に忍びよる影
七月二十日(水)榊
何者かに拉致監禁され、歯をすべて抜かれるなどの暴行を受けたあと、解放されると駐車していた自分の車に駐車禁止の札が貼ってあった。夢から覚めると夜中の二時だった。
体を起こし、誰かのいびきをしばらく聞いた後、棚から買い置きの経口補水液を出して飲んだ。冷えていないそれは甘いだけで美味しくなかったが、いくら飲んでも喉の渇きは癒えなかった。
ベッドから起き上がり、部屋を出る
1人のばあさんを3人のじいさんが争う(病院によくある光景)
七月二十二日(金)砂原
関さんをめぐって、田渕さんと福留さんと小坂井さんが三つ巴になっている。この間も田渕さんが外泊許可を取って留守にしている隙に、福留さんが関さんを散歩に誘い、断られて帰ってきた。そんな福留さんを「負け犬」と嘲り笑い、「女を口説くときはこうするんだ。よく見とけ」と勇んで出かけた小坂井さんも、すぐに振られて帰ってきた。いずれにしろ、関さんがどちらも振ってくれてよかった。
女房が綾小路きみまろにハマる
七月二十五日(月)福留
毎週日曜、見舞いに来ていた女房がなぜか昨日は来なかった。不審に思い自宅に電話を掛けてみると、「ああ、恵理子(長女)のところに行っていたのよ」と言う。
こっちは洗濯物がたまって下着の替えがなくなったり、歯磨き粉があと少しになったりしているのに、入院中の亭主を放っておいえ娘のところへ遊びに行っているとは何ごとか。怒りのあまり受話器を握る手が震えた。
「恵理子のとこ