パラサイト 半地下の家族のメッセージ

アカデミー賞を受賞した韓国が製作したパラサイトという映画を見ての感想・考察です。
ネタバレを含みますので、この先はネタバレを気にしない人か視聴済みの方のみお読みください。

最初に抱く感想は、「展開の意外さが今まで見た中でナンバーワン」でした。
予想を裏切られるストーリーというのは、小説、漫画、映画それぞれありますが、色んな作品を見るにつれ、その機会は減っていくと思います。

この映画を見て、展開を予想できなかったのは映画の雰囲気が序盤・中盤・終盤で大きく変わるからだと思います。

序盤は全員に仕事がなく貧乏な主人公家族が様々な策を使って、金持ち家族のすでにいる使用人達を追い出し、英語と美術の家庭教師、運転手、家政婦として雇われるように仕向けるというストーリーです。
主人公家族は、長男である主人公、妹、父、母の4人家族です。それぞれ、主人公は英語の家庭教師、妹は美術の家庭教師、父は運転手、母は家政婦として雇われます。雇われるように仕向ける際、それぞれは他人として雇われるように細工をします。
真面目に働いていた人を陥れて、家族を雇用させるように動くという完全に悪なことをしているのですが、主人公たちの貧乏具合と仕事の有能さを表現する描写が多く、意外と嫌悪感なく見ることができます。
むしろ、感心させられるような手口でコメディかのように面白く感じることができました。これは主人公がスリ師や詐欺師である作品と類似しているからだと思います。

中盤では展開が一気にガラッと変わります。
主人公一家が務めている金持ち家族の家の地下には、なんと前職の家政婦の夫が暮らしていたのです。金持ち家族はそのことには気づいていません。
そのことを知った主人公一家は、家政婦夫婦を警察に通報しようとしますが、ミスにより前職の家政婦に金持ち家族を騙して一家で雇用を獲得していたことがバレてしまいます。
その様子を動画に撮られてしまい、もみくちゃになっているところで金持ち家族がキャンプから帰ってきてしまい、家政婦夫婦を地下に閉じ込めてしまいます。その際、階段から突き落としたことが原因で、家政婦が死んでしまいます。しかし、夫婦を閉じ込めているため、主人公一家はそのことに気づいていません。
この辺りからホラーやサスペンス要素が入ってきます。

終盤では、地下室にいる夫婦をどうにかしようとします。
父親は妹に今後の計画を聞かれた際に、俺に計画があると言いながらも、再度主人公に計画を聞かれた際には「どうせ計画を立てても計画通りに行かないから、無計画で行こう」という楽観的に考えていることを明かします。
主人公はとても計算高く緻密な計画を立てるタイプです。それを聞いた主人公は金持ち家族に雇われる計画を立てたのが自分だったこともあり、責任を感じて、自分がなんとかしないといけないという決心を固めます。そして、地下の二人を殺すことを計画します。

金持ち一家の長男の誕生日パーティで、主人公一家も招かれます。
その時に主人公は地下室に行き、前職の家政婦夫婦を殺そうとしますが、すでに妻の方は死んでいることを目撃します。そこで動揺している時に、後ろから夫に頭を殴られ気を失ってしまいます。
そして、そのまま夫はパーティが開かれている中庭に行き、主人公の妹を包丁で刺します。主人公の父は妹の傷口を押さえ、母は家政婦の夫を殺そうとします。
その時、妹が刺されたことを目撃した金持ちの息子が失神してしまい、金持ち夫婦は病院に連れていこうとします。そして、主人公の父に向かって「早く運転しろ!」と叫びます。止血で動けない主人公の父を見ると、「車のキーを寄越せ!」と叫び、主人公の父は車のキーを放り投げますが、もみくちゃになっている家政婦の夫と主人公の母に当たってしまい、金持ち夫はそのキーを拾います。その際に地下生活が長い家政婦の夫の匂いが臭く、鼻を摘みます。その時に、陰で金持ち夫が主人公の父の加齢臭の文句を話していたことがフラッシュバックし、なんと主人公の父が金持ち夫を包丁で刺してしまいます。

その後、時が経ち、主人公の妹は刺された怪我が原因で亡くなってしまいます。主人公は病院で意識を取り戻します。
ニュースでは主人公の父がまだ捕まっていないことが報道されていて、主人公は調査の末、父が金持ちの家の地下にいることを突き止め、自分が金持ちになり、その家を買って父を救い出すことを決心するシーンでエンディングを迎えます。

終盤は、サスペンスともなんとも言えない展開で、見ていると「え!?殺すの!?」「刺したぁぁぁ!!?」「何で主人公父が金持ち夫を刺すんだ!?!?」と驚きの連続で、頭に?と驚きが溢れる怒涛の展開です。

展開を予想できなかったのは映画の雰囲気が序盤・中盤・終盤で大きく変わるからだと書きましたが、この作品の最も特徴的な点は、コメディ展開、ホラー展開、サスペンス展開とどんどん雰囲気が変わっていく点だと思います。

僕が今まで見てきた映画は、コメディならコメディ、ホラーならホラー、サスペンスならサスペンスとそれぞれ映画の雰囲気が統一されていました。
もちろん、最初はコメディだが、中盤以降は真面目な雰囲気になる作品などもありますが、そういった場合は中盤以降でもコメディの空気が若干残っていることが多いと思います。

しかし、パラサイトでは本当に雰囲気が一気にガラッと変わります。
中盤はコメディの空気が全くなくなり、終盤に至ってはスプラッタに近い雰囲気になります。
そうなると頭が展開に追いつかず、予想を出来なくなってしまうのです。

見終わって後から考えてみると、主人公が前職家政婦夫婦を殺そうとするのも、家政婦夫が主人公家族に恨みを抱いて刺すのも、十分予想できる展開なのですが、序盤の明るい雰囲気に引っ張られて、まさか本当に殺したり、さしたりすることはないだろうと心のどこかで思っていたために予想を裏切られたように感じたのかも知れません。
こういった感覚を味わったのは子供の頃以来なので、非常にスリリングで楽しめました。

さて、とても面白かった作品ですが、作品に込められたメッセージも様々なものがあると思います。

主人公一家と金持ち一家による「貧富の差」
地下室に知らない人が住んでいるという「身近な危険や恐怖の存在」
元々金持ち一家に勤めていた使用人たちの理不尽な解雇による「不合理、不平等」
妹の死による「因果応報の世の中」
お互いの距離が近い主人公一家とそれぞれのことを余り知らない金持ち一家による「家庭による人との距離感の差」

レビューには色々な考察をされている方がいて、勉強になるものもたくさんありました。
アカデミー賞と取った作品は多分、観て単純に面白かったというだけでなく、何か考えさせられるようなメッセージを含んだ映画だと思うので、もっと噛み砕いて考えられるように反芻していきたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。



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