学校はコロナだけ警戒していればいいのか②「健康診断は・・・」
養護教諭の仕事も
前回、色々な教育活動が「感染症対策」の名のもとに、さしたるエビデンスも無く制約されていることを書きました。
子どもたちの心身の健全な発育発達をあずかる、私たち養護教諭の仕事も、様々な制限のもとに行われています。
まず、6月現在、学校医による健康診断が実施できていません。
本来、健康診断は、学校保健安全法の施行規則に「6月30日までに実施するように」と明記されています。それを受けて養護教諭は、新年度の盛りだくさんに忙しい日課の中、針の穴に糸を通すようにして健康診断の日程を組み、同僚から「この忙しいのに・・・」とぶつくさ言われたりしていたわけです。しかし、今年度に限っては、新型コロナウイルス感染症の流行状況を鑑み、特別に年度末までに実施すればいいと変更がなされました。
この決定の背景にあるのは、主に二つの観点だと思います。
一つは、学校医の先生の負担軽減です。健康診断延期の決定がなされたのは3月19日。まさに医療崩壊が心配されていた時期と重なります。校医の先生は専従ではありません。地域の開業医の先生が、教育委員会と契約をし(報酬を払うことで)学校医の業務を担ってくださっています。医療現場が大変な状況にあるので落ち着くまでは健康診断は延期…というのは、合理的な判断でしょう。
もう一つは、健康診断が感染リスクをはらんでいるという点です。内科健診での咽頭部の視診や、歯科健診は、児童生徒が感染者だった場合に、校医が感染してしまうリスクがある。また健康診断のために多くの児童生徒がひとところに集まる「密集」や、校医の「手」を介しての接触感染などがリスクとして考えられます。
では、学校医を呼ばずに行う健康診断はどうでしょうか。
健康診断は、検査者によって大きく三つの種類に分けられます。
①医師による内科健診、歯科健診、眼科健診、耳鼻科健診、運動器検診など
②検査委託機関による胸部X線検査、尿検査、心電図検査、脊柱側彎症検査など
③教職員による身体測定・、視力検査、聴力検査、色覚検査など
現在学校現場では、③の教職員の手による測定や検査も行いにくい現状があります。管理職から、「6月はやらなくていいんじゃない・・・?」「1学期に健康診断をやるのはちょっと・・・」と言われたり、自治体教育委員会からやらないように通知が来てしまったりといった状況です。
養護教諭によっても、この件に対する反応は様々です。やるとなったら感染症予防対策との両立が大変なのは目に見えていますし、反対を押し切ってまでやらなくても・・・と考える人も多いでしょう。
しかし私は、できるのならばなるべく早く測定や検査をやりたい派!なのです。
現に本校ではすでに、身体測定・視力検査・聴力検査を実施しました。
本来、健康診断の実施時期には、「子どもたちの健康状態を早期に把握する」「疾病の早期発見、早期受診につなげる」「身体の診察を通して虐待などの早期発見につなげる」といった複合的な意味があり、なるべく早くやってね、目安時期は6月末よ、となっていたのです。
身体測定をすると様々なことが分かります。体重がぐっと減ってしまった子もいました。休校期間に給食が食べられなくなると体重が減ってしまう子どもが、こんな飽食の現代にもいるのです。
逆に体重の増えが気になる子もいます。
また本校の例に限って言えば、視力低下をきたしている子どもが例年に比べて多いという特徴が見られました。休校期間にネットメディアにどっぷり浸っていたことが推察されます。
こういった検査を、「感染症予防対策のため」というあやふやな理由によって先延ばしにすることは、子どもたちの健全な発育発達を損なうことにつながります。
せめて、せめて、学校で出来る検査くらいはやりましょうよ。(やらせてあげましょうよ)
コロナウイルスにかからなければそれでいいわけ?
もちろんですが、身体測定・視力検査・聴力検査も、感染予防対策を講じて行いました。
ただし、合理的で意味がある対策のみ、取り入れましたが。
管理職「身長計・体重計を一人ずつ消毒して実施した方が・・・」
わたし「???なぜですか???」
管理職「接触感染が心配じゃない」
わたし「接触感染は手を介して起こるものですよ・・・?」
管理職「???」
わたし「測定の前後に全員手洗いと手の消毒をさせます。それでも心配なら靴下を履いたまま実施します。もちろん子ども達はマスクをしたまま検査を受けます。わたしは感染症対策はそれで十分と考えますが」
管理職「・・・それでいきましょう」
なんてやり取りはありましたが。
広い会場を換気し、待機人数を極力するくなくし、間隔をとって待たせました。視力検査は遮眼子なしで、手で目を隠させました。聴力検査は一人ずつヘッドホンを消毒しました。
必要と考えられることはやってます。でも見せかけの安心感のために、教職員の労働力と消毒液を無駄遣いしてはいけないのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?