(主に)ジャニーズ楽曲と絡めてラブライブ!スーパースター!!挿入曲を聴いてみる(1期編)

はじめに

筆者は「ラブライブ!スーパースター!!」1期を見て、披露された楽曲のクオリティが高いと感じました。
「未来は風のように」に驚いた後も主にジャニーズ楽曲から関連性を感じられる曲があったため、その観点で驚いた曲について記録を残しておこうと思います。あ、アニメのネタバレ注意。

常夏☆サンシャイン 冒頭のソロ

常夏☆サンシャインは、SMAPファンなら最初の千砂都とかのんによるソロ&ソリに「君色思い」の冒頭の中居君のソロを思い浮かべるはず…の(思い浮かべますよね??)イントロから始まるサマーチューン。曲を聞き進めていくと、冒頭の部分はサビであったという種明かしも。

「Hoo!」「Yeah!」の合いの手も特徴的なので何か元ネタがあるかもと探していたら、「SMAP 016 / MIJ」に収録の草彅剛のソロ曲「la,la…Shall we Tap?」という曲のサビで「Hoo!」「Yeah!」という合いの手(この曲だと効果音と言った方が近い?)がありました。
タップダンスではないけど千砂都のダンススキルの高さが分かるストーリーでの一曲だったため、ダンスの曲から持って来たリンクを感じますが、こういう掛け声は定番化してるのかもしれませんね。

Wish Song 00年代J-popと合唱曲

Wish Songは葉月恋が母のスクールアイドルへの思いを受け取り、葉月恋
自身もスクールアイドルになった後で、「音楽で結ばれる学校になってほしい」と開校された結ヶ丘女子高校初めての文化祭で同校のスクールアイドル・Liella!(この時はまだこの名はないけど)が披露した曲です。

柔らかいドラムのサウンドが生み出している心地良さは、00年代あたりの
J-popサウンドを感じる所です。ジャニーズ楽曲からだとTOKIO「Ambitious Japan!」が近いでしょうか。

紹介している動画から伝わる通り、発表された2003年から20年に渡り東海道新幹線の車内チャイムにも使用されていた楽曲です。
また、ジャニーズ楽曲という縛りを取ると2007年に放送された「ポケットモンスター ダイヤモンド&パール」のED「君のそばで~ヒカリのテーマ~」の雰囲気が近しいと感じます。

この2曲を聴くと、Wish Songはひと昔前のJ-popサウンドに乗せて令和のスクールアイドルが歌うことで、結ヶ丘女子高校が前身の神宮音楽学校から受け継いでいる「音楽で結ばれる学校」(=Wish)であることを音楽的に体現していることを感じますね。

また、皆の高音や音の伸びもこの曲の持ち味となっています。
TVver.だけを聴いても、すみれはセンターだとか関係なく解放感たっぷりに、恋の「五線譜の上」の「せ」の発音は「少し前まではスクールアイドル忌避でアイドルの曲なんか歌うことはなかったけれど、スクールアイドルとして歌うことになった音楽科の生徒会長」味を感じます。

こういったメロディーはカンタータを連想させられます。

なお、動画で紹介しているCantareとはカンタータの動詞形で、「歌われるもの」との意味を持っています。

2話で劇中オリジナル曲「いつか」の合唱が校舎から聞こえてくるという描写があることからは※、結ヶ丘にはかのんと可可以外にも歌が好きな子がたくさんいることが連想させられます。それを踏まえると、文化祭で歌われたWish Songは合唱曲要素とポップス要素が融合し、合唱でも独唱でもなくスクールアイドルに沿う曲になっていることがわかります。
サビを中心にしたカンタータを彷彿とさせるメロディーラインとポップスの融合。普通科と音楽科を持つ学校のスクールアイドルが歌う上でこの上ない楽曲と言えるでしょう。


※スーパースターにおける合唱要素は作中描写だけでなく、挿入曲にも見受けられる所です。この点については機会があれば語ることにしましょう。

ノンフィクション!! スクラッチ、ラップ、そしてジャズ

作品でも人気楽曲の「ノンフィクション!!」。
私はこの曲のアレンジネタはどこかにあるはず…!と思ってSMAPを中心に曲を漁っていました。
まず紹介するのがSMAP「Swing」です。
2010年のアルバム「We are SMAP!」収録のこの曲は、「Hey Heyおおきに毎度あり」「がんばりましょう」などNew Swing Juck路線を走っていた90年代のSMAPの楽曲を支えたミュージシャンが多数参加し、ビッグバンド調の仕上がりになっています。間奏で挿し込まれているスキャットのリズムが「ノンフィクション!!」と非常に近しいと言えると思います。

間奏部分(楽譜,音源共に筆者作成)

譜面の上段がノンフィクション!!、下段がSwingです。後者の方が音が細かいですが、ノリは結構近いですね。
個人的に「Swing」は後の「シャレオツ」(2013年)や「華麗なる逆襲」(2015年)など所謂"大人SMAP"の楽曲群の先駆けとも言える曲と思っており、
アイドル×ジャズを堪能できる一曲です。アイドルの変化球としてSMAP「Swing」は位置づけることができ、Liella!「ノンフィクション!!」もそれに準ずると言っていい曲だと考えます。
 
また、アレンジに関してはこんなものを見つけました。

sunrise,sunshineは2002年のアルバム「SMAP 016 / MIJ」収録の一曲で、こちらは別アレンジです。スタッフクレジットを見るに「SMAP×SMAP」での歌唱でしょうか。
スクラッチとラップの掛け合わせ、Bメロでのジャズ調への変化を見せるこのアレンジを聴くと「ノンフィクション!!」はそれほど珍しいアレンジではないと思ってしまいますが、こういった曲がアニメから登場した事実がLiella!の物語に寄与していると考えることができるのが「ノンフィクション!!」の特筆すべき点なのでしょう。

ラブライブはμ’sから始まりAqours、虹ヶ咲とシリーズが続いてきました。「ノンフィクション!!」のアレンジからは、青春ロック味が強かったμ’sやAqoursのような曲をラブライブ予選で持ってきていては、もはやラブライブを勝ち進むことが困難になっていることを象徴しているのではないかとも感じます。1期で「ラップ」「独唱」と予選で披露する楽曲に条件がつけられていたのは本選に出場するスクールアイドルの絞り込みを目的としているのは明確です。それだけラブライブシリーズの世界観の中でスクールアイドルが普及し、パフォーマンス競争が激しくなっているのでしょう。

Liella!はここまでで紹介した3曲がかなり尖っていた分、都大会最終予選の「Starlight Prolouge」でサニーパッションに一歩及ばなかったのは、音楽的に守りに入ったこと※が理由の一つだと筆者は感じます。こういった音楽面からの考察が可能なのが、作品の面白い所です。


※キーを半音下げて「Starlight Prolouge」を聴くと、D♭majorキーで歌うことで曲が持っていたのではないかと思うぐらいに、普通の曲に聞こえてしまうと筆者は感じています。Liella!はまだまだ始まったばかりであることを「Starlight Prolouge」は音楽的にも体現しているのです。

未来は風のように 令和のLove so sweet

「未来は風のように」はアニメのエンディングを飾った曲です。
筆者はこの曲を始めて聞いた時「遂に来たか…!!」と感じ、ラブライブスーパースターは音楽に一層力を入れている作品だと伝わってきた点で、非常に思い入れが強い一曲です。

それはさておき、何が遂に来たかというとサビでの転調です。
「ラブライブ!」での「きっと青春は聞こえる」「どんなときもずっと」、「ラブライブ!サンシャイン!!」での「ユメ語るよりユメ歌おう」「勇気はどこに?君の胸の中に!」の4曲に対する「ラブライブ!スーパースター!!」の「未来は風のように」。
この5曲はピアノの静かなサウンドから始まり、5小節目から音が増えるという二段で盛り上げるイントロを持つのが共通点ですが、ここにサビの転調が加わったのが「未来は風のように」でした。
この構成を持ったジャニーズ楽曲が、嵐「Love so sweet」です。

Love so sweetはサビ前の2小節でBmajorからCmajorへの転調がある一方、未来は風のようにはEmajorからGmajorへの転調となっています。2番サビ以降のCメロ→落ちサビ→大サビはJ-popでもアニソンでも定番中の定番の流れですが、ラストのメロディーのリフレインを聴くからにLove so sweetを下敷きにしている構成と言えるでしょう。
一方、リズムを刻むのはLove so sweetがドラムなのに対し、未来は風のようにはEDMで時代を捉えています。未来は風のようには、令和のLove so sweetと言っていいかもしれません。

色々語ってきましたが、「未来は風のように」は恋が始まる曲ではなく、
スクールアイドル=青春が始まる曲、と言っておきましょうか。どちらも歌いやすいメロディーラインを持つ曲ですが、2曲を続けて聴くと「未来は風のように」は音数が少ない点、アイドルとしてのキャリアを感じさせるようになっているのが憎い所です。
「ラブライブ!スーパースター!!」が嵐の活動休止後に放送されたことも重なり、嵐は他のアイドル達に影響を与えるような曲を歌ってきたんだなと改めて感じてならないのです。

おわりに

以上、第一期の曲を見てみました。
こうして全体を見渡してみると、「Start!! True Dreams」「未来予報ハレルヤ!」「Tiny stars」がLiella!の物語を反映しつつラブライブの王道を押さえた曲である一方で、Liella!がこれまで以上に彩り豊かな音楽を披露しているのかがわかりますね。NHKEテレで放送された作品であることも合わせると、ラブライブシリーズのファンのみならず幅広い年代の人に良質なアニソン(に留まらないポップス)を届けていきたいという意欲を感じさせられます。
筆者は主にジャニーズ楽曲を参考に曲を聴いてきましたが、嬉しいことにこのような楽しみ方は2期でも続くことになります。

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